第54話 崩壊
「ね……ねぇねぇ」
放課後。前野は俺に何も言わずに帰っていってしまった。
……まぁ、考えてみれば当然である。俺は自分で前野との関係を破壊したのだ。前野がそんな態度をとるのはわかっていた。
そんな折に話しかけてきたのは、横山だった。
「……なんだ?」
「もしかして……前野さんと喧嘩でもしたの?」
なぜか少し嬉しそうに俺にそう聞いてくる横山。
「……お前に関係ないだろ」
「そ、それはそうだけど……なんていうか……心配だからさ」
「……心配? なんでお前が心配するんだ?」
「え……そ、そりゃあ、近くの席だし……」
俺は横山のことを睨む。横山は居心地悪そうに俺から少しずつ視線を反らす。
「……横山は、俺と話していて、楽しいか?」
「……へ? い、いきなりどうしたの?」
「……前野に聞いたんだよ。同じことを」
そう言って俺は立ち上がる。横山は呆然として俺を見ている。
「ちょ、ちょっと待って! ウチは、楽しいよ! 後田君と喋るの!」
横山は慌てて背後から俺にそう言う。俺は振り返って、わざとらしく口角を上げる。
「……それは、お前がいつも楽しげに話している仲良しグループより、楽しいのか?」
「え……そ、それは……」
そう言ってから俺は横山の方に近づいていく、横山は少し驚いたように後退りする。
「……俺はお前と話していても楽しくないよ。お前に……なんだか情けをかけられているみたいで」
そこまで言ってしまってから流石に言い過ぎたと思ってしまった。見ると、横山は……目の端に涙を貯めている。
「そ、そんな……酷いよ……ウチは、そんなつもりじゃ……」
時すでに遅しというヤツだった。横山は涙を流しているし、教室中のクラスメイトが俺のことを見ている。
俺は……この上なく情けない状態でそのまま教室から逃げ出したのだった。
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