第38話 テスト

 それから数日後。ついにテストの日がやってきてしまった。


「ど、どうしよ~……マジで無理だって……」


 あまりにも不安なのか、横山は朝っぱらから俺に話しかけてきていた。


「……知らん。俺はお前に教えることは全部教えた」


「で、でもさ~……ウチ、あんまり頭良くないから……もし、これで赤点取っちゃったら、後田君に悪いっていうか……」


「……そういうのは考えなくていいから。ほら、そろそろ先生来るから、席戻れって」


 明らかに怯えた様子のままで横山は席に戻っていく。アイツは……どうしてあんなに自分に自信がないのだろうか。


 俺はふと、前の席のつややかな黒髪を眺める。結局、最近、あまり前野が俺に話しかけてこない。


 なんだか横山のせいで前野との関係が悪くなってしまったようで……いや、別に前野との関係がどうなろうが、どうでもいいはずなのだが……。


 そして、先生がテスト用紙を配る。当然、用紙は前の席から配られてくる。


 と、前野が振り返り俺の方を見る。


「私は、後田君に教えてもらったこと、絶対無駄にしないから」


 それだけ俺にだけ聞こえる程度の小声で言ってから、前野は用紙を渡して俺に背を向ける。


 そんな予想外の前野のセリフを聞いてしまって、しばらくの間、テストが始まったというのに俺は呆然としてしまったのだった。

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