お笑い・リボ払い・CG
目の前にいるお笑い芸人を買った。それは間違っていなかったと思う。そのことを後悔もしていない。それでも、目の前に積みあがった支払いに頭を悩ませる。それも仕方のないことだと思う。
リボ払いは便利なシステムだと聞いていた。月々の負担は少なく済み、気軽に買い物ができます。そう乗せられて買ったお笑い芸人。最初のうちは、いい買い物をしたと上機嫌だった。しかし、やがてそれが間違いだったと気付く。月々に払う金額は確かに負担も少なく増えることはなかったがしかし、減りもしなかった。終わることのない支払いの原因はリボ払いでの買い物を続けてしまったからなのだが、それが間違いだったと気が付いたのは最近の事だ。
だから。こうして、お笑い芸人を見ながら呆けるしかない。どこで道を誤ってしまったのか。いや、間違いを起こしたのはこのお笑い芸人を買った瞬間だったのだ。
「はいどーもー。洗浄機です」
「扇風機です」
「信号機です」
「「「家電三兄弟です!」」」
お笑い芸人が漫才を始める。何度も見てきた映像だから笑い所も知り尽くしている。信号機は家電じゃない。だ。
くすりはするが大きく笑うことはない。見慣れてしまった。それが少し悲しくはある。昔はこの漫才を見るだけで元気が出たというのに……。
「ってお前、家電やないないかーい」
真ん中の信号機に左の洗浄機と右の扇風機がツッコミを入れる。
これが昔は面白かった。でも……リモコンの一時停止ボタンを押す。お笑い芸人の動きが止まった。
彼らは本人ではない。よく似た作られた3DCGデザイン。それを購入したのだ。それを3Dプロジェクターで目の前に投影していた。一度買ってしまえばまるで自宅で漫才を見せてくれる様なシステムとあって好奇心をそそられつい購入してしまったのだ。
新しいネタが更新されるたびにそれを目の前で見せてくれるとあって最初の頃は感動もしたし、次の更新はいつだろうと心待ちにしていた時期もあった。
しかし、いつしかネタの更新が来なくなり、次第に見る機会も少なくなっていった。サービスが終了したわけではないのでいつの日か急に更新が来てもおかしくはないはずなのだが、それはいつの日になるのだろうと考えてしまう。
リボ払いの支払いが終わるのが先か、更新が先か。とりとめのないことを考えて現実から逃げているのはわかっている。わかっているけれど、だからと言って向き合うこともできない。手詰まりだ。
それでも返していくことしかできない。じっくりとゆっくりと、着実に。それが一番だ。
ふと、自分でネタを作って。お笑い芸人に漫才をやらせることが出来ないものかと気が付いた。
この地獄のようなリボ払い生活を自虐でもいいからネタにしたいと思った。家電三兄弟からの卒業。家電の次は何がいいのだろう。そんなことをぼんやりと考えていたら少しだけ元気が出てきた。
おばあちゃんが信号機を持ち出して来たら面白いのかもしれない。なんとなくだけど、そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます