18.地獄攻略の目的

 深い眠りから覚めると、俺の頭は誰かのひざの上にあった。


 えっと……うわ!!


「ルペコ!!」

「ん…………ああ、プラム。起きたの」

「あ……ああ、えっと。これは」

「気にしないで。わたしがしたくてしたんだから。それにプラムはケガしてるし」

「あ、ありがとう。ところで、ボスはどうなった?」

「プラムが倒したんじゃない。今この部屋は平和よ」


 そっか。あれから倒して俺は【神器】の反動で気絶していたんだ。我ながら情けないが、でも攻略は完了した。まさか地下【200F】に【6000F】相当のボスが――しかも通常ボスの三倍強い『インフェルノボス』が召喚されるなんて思いもしなかった。


 普通、ありえんだろ……。


 なにかのバグか……。それとも誰かの陰謀いんぼうか。


 まさかあの時……村にいたアイツ・・・が。



「どうしたの、プラム。怖い顔して」


「あ、いや……なんでも。そえば、ポルカの姿が見えないけど」


「大丈夫。ポルカはそこそこ」



 そこそこと言われて視線を流すと、そこには横になって目を閉じているポルカの姿があった。あ、寝ていたのか。可愛い顔して……お、ちょっとあのプニプニの頬を突いてみたいな。怒られそうだからやらないけど。



「無事で良かった。まあボスの再召喚までは一日あるし、とりあえず、ちょっと休憩したら出よう」


「うん」



 ていうか、俺このまま膝枕ひざまくらされたまま?



「……あのさ、ルペコ」


「ん~?」


「いや……その、ルペコってそういえば出会った時に言っていたよな。自分は『聖女』だって。だけどギルドを追放されたって」

「ああ、それね。聖女のクセに情けないよね。普通、需要じゅようはあると思うんだけど……ほら、『毒ヒーラー』だから」


 ちょっとシュンとなるルペコ。あ、まずい。はげまさないと!


「でも今は『ヒール』もちゃんと出来るし、しかも『毒』攻撃も出来るんだ。自分の力をほこっていい。胸を張っていいんだよルペコ」



「そうかな~…」



「ああ、ルペコの力なきっと、俺のしえなかった【7600F】の攻略も楽になるかもしれない。いや、絶対になる。俺が保証する」

「え、プラムってそんなところまで降りてたんだ。すごい。でもさ、なんでプラムは最下層を目指すの? なにか目的があるんだよね」



 そう、目的はあった。

 俺の最大の……人生を、命を懸けた目的。



「ああ、言いそびれていたね。俺はね、半年前ほど自分が住んでいた村を襲われたんだ……それで家族全員を失って……でも俺は見たんだ。あの時、巨大なモンスターと人影を。だから、その巨大モンスターを操っていた何者かがいたはずなんだ。俺はそいつに……復讐がしたい」



「そ……そうだったんだ」



 ルペコは少し身を固くした。

 そうだよな、こんな話聞いたら誰だってゾッとする。



「悪い、話すべきじゃなかったな」

「ううん。辛かったよね、プラム。いつもあんなに明るいのに……」


 ぎゅっと抱きしめられ、俺は……ちょっと泣きそうになった。


 ……ああ、なんだか久しぶりの人のぬくもりだ。



 妹のスモモを思い出す。

 あいつもよく俺にベタベタくっついてきたっけな。



「でも復讐のために?」


「ああ、悲しいとかなんの意味があるんだとか思うかもしれない。けど、俺にはもうそれしかないんだ」



「……いいよ。手伝う」



「え……」


「わたしを捨てずにいてくれたプラムのためなら、ずっとついて行く。わたしも、もうあなたしかいない」


 また、ぎゅっと力がこもる。

 まるで『わたしを捨てないで』と言っているような、そんな気がした。


「ルペコ……」

「うん」



「おはようございます~」


 とまぁ、タイミングよくポルカが起き上がった。



「あ……」

「やだっ!」



 恥ずかしかったのかルペコは俺を一本背負いで投げた。ちょ、おま!

 俺は投げ出され、そこらへんの床に頭から落ちた。『ゴチン』とヤバイ音がして、頭蓋骨ずがいこつの砕ける音がした。



「ったああああああ~~~!! …………ぐ」



「およ。ルペコさん、なぜプラムさんを投げたのです!? ほら、また気絶しちゃいましたよ~」

「そ……そんなつもりなかったんだけど! ごめーん、プラム!! ヒール!」



 し…………死んじゃうって、それは。



 俺のもとに駆けよってきたルペコは、近くで必死に謝っていた。

 あぁ……あの、ルペコさん……。体全体を使って頭をブンブン下げるのはいいんだけど…………その勢いでスカートがまくれて黒いものが見えてますって。

 前々から思っていたけど、ルペコはスカート短すぎだ……。



 ……うぅ。ルペコには申し訳ないけど、しばらくこうしていよう。

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