12.神器をオーバー精錬しよう

 向かった先は【鍛冶屋かじや】というか……だだっぴろい【鍛冶場かじば】だった。なんだろう、この戦場みたいな熱気とか雰囲気。みんな荒れ狂ってるな~。


 武器や防具を精錬する『ブラックスミス』が何十人といる。男たちは冒険者からったアイテムをひたすら過剰かじょうしまくっている。あんな全身から大量の汗を流して大変そうだ。


「さて、俺はっと――【神器・マーチソン】をカンカンすっかな」

「ねえねえ、プラム。そのペラペラなーに?」


 俺の【神器】に興味津々きょうみしんしんのルペコ。

 顔が近い……。猫耳かわいい。


「うん、これはね。はい、アイテムの詳細ね」



――――――――――――――――――――

 【+10マーチソン】

 【種類】:肩装備

 【効果】

――――――――――――――――――――

 すべての属性攻撃を30%軽減する。

――――――――――――――――――――

 Lv.1 ごとに ATK + 2。

――――――――――――――――――――



「え、これなんかただの腕章わんしょうだけど。肩装備なのに」

「まあ、防具によってはそういうこともあるよ。ね、ポルカ」

「ええ。その辺りは仕様と思って下さい」


 ルペコはなんだか納得いかなさそうな表情だ。むっとしている。

 細かいことを気にするだけ損だぞ~。


「じゃ、いってくる。うまくいくといいけどなぁ」



 気の良さそうなお兄さんブラックスミスに【神器】の精錬をたくした。


「ほー。兄ちゃん。こりゃ珍しい【神器】だな。『マーチソン』? 聞いたことねぇな。なんで神器がこんな腕章なんだか……」


「なんせマイナー神器・・・・・・ですからね」


「で、どこまで【オーバー精錬】するんだい?

 分かっちゃいると思うが、【神器】ともなると成功率はかなり低い・・・・・ぜ。もしも精錬に失敗した場合、アイテムは消滅する。それでもやるんだな?」


 毎度ながらの常套句じょうとうく、ありがとうございます。俺はすでに何度も挑戦しているので、分かってる。ここは、精錬ギャンブラーとしてもやるしかないだろう。最強になるにはリスクと戦うことも必要なのだ。


「大丈夫です。やっちゃって下さい。壊れても問題ないんで」

「そうか。では『サクラニウム』をちょうだいする。手数料は精錬一回【5,000ギフ】だ」


 この街に降りてくるまでの階層で入手した『サクラニウム』四個を渡した。それと四回分の料金【20,000ギフ】を支払った。これでもう後戻りは出来ない。



「いくぞ――!」



『カンカン!!』



 金属の響く耳心地の良い音がした。まだ成功か失敗かも分からないけれど、防具が精錬された音だ。さて、次には結果が判明する。



『キュピーン!!』



 この光るような音。これは成功。

 成功率は確か……『50%』だったかな。うまく引けたな。

 だが、まだ一回目。あと三回だ。



『カンカン!!』


『キュピーン!!』



 おし。成功率『40%』を引いたか。

 まだまだ!



『カンカン!!』


『キュピーン!!』



 きたきた!

 ここまでで、成功率『30%』! いいぞ。



 次でラスト。成功率は『20%』となる。



「いけえええ!!」


 ルペコもポルカもこの【オーバー精錬】を息をんで見守っていた。ルペコにいたっては初体験の出来事なせいか必死にいのるポーズをしていた。健気けなげ~!

 つーか、俺ももう手汗やばい。ここまで成功したのは久しぶりだからな。



『カンカン!!』



 ……どうだ!?



『キュピーン!!』



「お……おっしゃぁぁぁぁああ!!」

「やったね、プラム! すごい! かっこいいー!」

「すごいですよ、プラムさん。『20%』を引けるだなんて! 奇跡です!」



 みんな一緒に飛びねて喜んでくれた。というか、俺以上に喜んでくれていた。なんだか精錬成功しただけでここまで喜んでもらえるとは……俺も嬉しかった。



「いやぁ、ヒヤヒヤしたよ。れるんじゃないかなってね。ルペコもポルカ俺のためにいのってくれてありがとな」


「よかったな、兄ちゃん。ほら、受け取りな」



 【 +14マーチソン を 入手しました 】



「やった! これで防御力も上がったし、微妙に補正も掛かるからね」

「いいなぁ。わたしも精錬してみようかな。あ、もちろん通常の方ね」

「いいんじゃないか、ルペコ。確か、ルペコの装備ってあんまり過剰がなかったよな。よし、成功記念だ。ほい、『エクサニウム』」


「ありがとー! たしかこの『エクサニウム』で通常精錬できるんだよね?」

「そ。がんばってこい。俺とポルカは――あれ、ポルカ?」


 俺に触発しょくはつされたのか、なんかもう精錬していた。



『グキリ!!』



 あ……失敗したみたいだ。


 ちょ、ポルカのやつ、地面にヒザをついて泣いてるよ。あんなにヘコんじゃって……いったい何を精錬したんだか。もしかして高級なヤツだったのかな。

 ま……なぐさめてやるか。

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