第16話 文芸部帝国首都へ突入

 首都はスグそこだった。


 文芸部員達はトラックで30分程走り、首都へと入って行く。



『ここでトラックを降りて、魔物の遭遇に備えましょう。慌てずに確実に魔物を倒していくのです』


「「「はぁあ~い」」」



「ところでサッチャン、俺達は何処を目指して進めばいいの?」


『魔物を殲滅して、ダンジョン核を壊して、魔物湧きを終了させましょう』



「ダンジョン核のある所が目的地なんだね?」


『はい、そうです』



「ダンジョン核のある所は分かってるの?」


『はい。

 あくまで計算結果による推測ですが、その場所は特定できています。私が案内する通りにお進みください』


「「「「「リョウカ~イ」」」」」



 実はA.Iサリーナも5万年の特別緊急任務で経験を積み、銀河最高のA.Iに成長している。

 文芸部員は勿論、サリーナ自身も比較対象が他に存在しないので、自身の実力に気付いていなかった。



『草原を移動してた時の1列縦隊では無く、2列縦隊になりましょう。

 脇道から出てきた魔物から、長く伸びた隊列を、不意に襲われる危険性を減らすのです』


「「「はぁあ~い」」」



 首都市街地の建物は、地球より洗練されたデザインをしているが、入り口や窓は殆ど破壊されている。

 壁も所々で破損しているが、大きな損傷は無いようだ。壁の素材はオーガの攻撃に耐えられるのだろう。


 暫く行くと、大きく崩れた建物も見えてきた。

 人族がナパームやバズーカなどの砲弾を使って、魔物と戦闘した跡かもしれない。

 若しくは、オーガより大きな魔物が暴れた跡だろうか?



 2個目の大きな交差点に差し掛かった時に、左横道の50メートル程先に3体のオーガを見つけた。

 身長3メートルぐらいはあるマッチョ体形で、手には斧や鎌を握っている。

 頭には二本の角が尖っていた。


 向こうもこちらに気付いたようで、ギロリと俺達を睨んだ。

 嬉しそうにニヤリと笑い、よだれをジュルリと太い腕でぬぐう。



 ドシンッ、ドシンッ、ドシンッ、


 と、踏み出した後。


 ドドドドドドドドドドッ!


 と、こちらに向かって走って来た。



「ユウト!」


「うん、ソウタ!」



「【スラッシュ】!」


 と、俺が言いながら両手剣を横薙ぎにすると、銀色に光る透明な刃がオーガに向かって飛んでいき、3体の腹を瞬時に切り裂く。


 ズッシャアアアアアッ!


 2頭のオーガは腹から内臓をこぼしてうずくまったが、1頭は腹を左手で押さえながらも突進してくる。

 右手の斧を振りかざし、正しく鬼の形相でそれを振り下ろした。



「【シールドバッシュ】!」


 ドッガァアアアアアンッ!


 ユウトが盾の武技で、オーガを吹き飛ばした。



 サクッ、サクッ、ドカッ!


 俺が両手剣で、ユウトは鉾で、3頭のオーガに止めを刺した。




 クミがリンとヒナコを見て呟く。


「私達、何もしなかったね……」


「「そだね……」」



 俺とユウトがオーガを廃棄処理していると、


「ねぇねぇ、ソウちゃん。私達も魔法を使いたいの。早く経験したいから……」


「うん。そだね、リンちゃん。

 先ず、魔法で遠距離攻撃してから、近接攻撃が基本だよね。次はなるべく、そうできるように配慮するからね」


「うん」



『来た道を戻らずに、このまま真っ直ぐ進んで右折しましょう。音を聞いた魔物に、前後を取られない様にする為なのです』


「「「はぁあ~い」」」





 暫くすると、正面にオーガが10頭ほど、丸く囲むように座っているのが見えてきた。



 1頭が俺達に気付き、指さして群れに教えると、オーガの群れが座ったままでこちらを振り向く。


 真ん中で何かをかじる、一回り大きなオーガが片膝を立ててから、


 ググググゥウウウンッ!


 と、立ち上がった。



 4メーターぐらいの背丈がある、オーガキングと言う魔物らしい。


 毛皮の服を片側の肩から纏っていて、しゃれこうべを数珠繋ぎにした首輪を掛けている……人間の物だろうか?



 まだ、距離が結構あった。



「それじゃあファイヤーボールを、一斉に『せーの』の合図で打とうね」


「「「はぁあ~い」」」



 オーガの群れは、


 ドシンッ、ドシンッ、ドシンッ……、


 と、ユックリと歩いて間を詰めてくる。




 そして、その距離が30メートルぐらいになった時。


「せ~の!」


「「「「「【ファイヤーボール】!」」」」」


 ボボボボボワッ、ドドドドドォオオオオオオオオオオンッ!


「「「ウガァアアアアアッ!」」」


 バランスボール程もある火の玉がオーガ達を蹂躙する。



「もういっちょ行くよ、せ~の!」


「「「「「【ファイヤーボール】!」」」」」


 ボボボボボワッ、ドドドドドォオオオオオオオオオオンッ!


「「「ウギャアアアアアッ!」」」


 道路幅いっぱいに火が燃え広がって、オーガ達が崩れ落ちていく。



 その火炎の中からオーガキングが、火達磨に成りながらも一匹だけで突っ込んできた。


 シュリィイイイイインッ!


 俺が180センチある両手剣で、肩から斜めに切り下げると、オーガキングが膝から崩れ落ちる。


「ウギャァァァ……!」


 ガクッ! ズズゥゥゥンッ!



 すかさずユウトが、鉾で心臓を突き刺した。


 ズッシャァァァッ!



 女子3人は魔法で水を噴射して、火を消してくれた。


 俺達は、まだ息があるオーガを手分けして止めを刺していく。



 ヒナコが短剣を使う事を躊躇ためらっていると、リンが俺に言った。


「ねぇソウちゃん、ここお願い?」


「うん」



 シュリィイイイイインッ!


 と、首を落としてあげた。



「「ありがとう」」


「うん、なんくるないさぁ!」



『マテリアル・リコンストラクターには安全装置が付いていて、生物を入れる事は出来ません。止めを刺してから廃棄処理して頂く必要があるのです』


「そうなんだね、サッチャン」




 俺達は全てのオーガを廃棄処理すると、そのまま真っ直ぐに道路を進んで行く。

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