悪の根

「……話を戻す、魔法の誓約についてだ」


随分と強引な話の切り方だ。

俺らしくもない。


「そうでしたね、正直その力に誓約をつけるのはあまりお勧めはしませんが」

「そういえば随分煮え切らない答えだったな、まあ一応あるにはあるんですけど、みたいな」

「えぇ、確か誓約によって強力な力を手に入れる事は出来ます。ただ誓約を作る事が出来るのは一つだけなのです」


あぁなるほど。だから直接的な力にならない嘘と真実を見抜く目はお勧めしないって事か。


「そういうことか、ちなみにメアリーはもう誓約をしてるのか?」

「えぇ、真の勇者様にお会いしたら使うという事も誓約の条件にしていましたので、まだ使った事はありません。もちろんフィーナ様も知りません」

「どんな能力か見せてもらう事はできるか?」

「申し訳ありません、メインの条件だけではその魔法の誓約に足りなくて他にもいくつか条件を作っていましたのでお見せする事はまだ出来ないのです」


そういう事ならまあ仕方ない。


「ちなみにもし私の誓約に勇者に処女を捧げる事が条件にしていたらナナシさんはどうします?」

「俺に従う予定の7人の中でお前が1番の役立たずになるな」

「……そーですか」


メアリーは拗ねたような顔でそっぽを向く。

こうしていると本当にいい女なのだが、生半可に性格を知っているだけに素直に褒められないのが残念だ。


「できれば嘘か本当か見抜く能力は欲しかったところなんだが、なにか心当たりはないか?」

「そうですね……確か似たような力がある魔道具が何処かの迷宮にあると聞いたことがあります」


魔道具、迷宮。

また聞き慣れない言葉だ。

まぁニュアンスで大体分かるが。


「迷宮か、メアリーは入った事あるんだよな?」

「ええ、何度か。ただ手に入った魔道具は目ぼしいものはなかったです。当たり外れが多いんですよねあそこ。魔物を倒してその魔物の素材を売る金策がメインでした」



やはり魔物は金になるのか。

金策になり、魔道具が手に入るのは悪くないが今の俺の実力で入れるのだろうか。


「なぁメアリー、今から黒魔法で魔力を解放するから俺でも迷宮に行ける力があるか見てもらえるか?」

「もちろんです、今のナナシさんの実力は私も見ておきたい所でしたので」


よし、魔力を解放するのは久しぶりだ。

山賊としてやっていた時以来、黒魔法を使う機会がなかったからな。


メアリーに確認し、俺は魔力を練り始める。




誰とどれだけ仲良くなろうと変わらない、根本の魔力の部分。

黒く。ただ黒い。悪の根。


練った魔力を少しずつ解放する。

久しぶりなのでちょっとずつ。



ほんの少し、魔力を解放したところでメアリーから怒号が飛ぶ。



「ナナシさん!!!魔力の解放をやめてください!!!!!」

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