第5話 no.filing タイガ二等兵の新生活

どうもこんにちわ、タイガです。

人助けの結果で異世界に転生した俺は濃すぎる初日の末にブラック企業もといブラック部隊に就職しました。

ただ俺が所属する帝都外世界住人事案対策課、通称『ガイジュウ』は構成員の特殊さの所為で任務外で人員が集中するのは非推奨とされており、軍所有の男性寮への入居は断られてしまった。

代りに紹介されたのが民間からの有志の協力者が経営してるという物件だったのだが…


「たんぽぽ魔王城て…」


渡された地図と紹介状、あと物件に関するメモにはハッキリクッキリ魔王城と記載されている。

3度見してもそれは変わらない。


「そっかぁー、俺も今日から魔王の僕の仲間入りかー」


高校生→転生者→軽度犯罪者→雇われ軍人→魔王の僕。

さようなら安定した生活、こんにちわ波乱万丈。

遠い目をしつつ、オスグロス帝国軍基地を後にして整備された街道を派遣してもらった馬車に揺られながら、俺は今、オスグロス帝国首都に向かっている。

軍基地から帝都「アリアメイヴェ」までは馬車で1時間程の距離。

これからの毎日の通勤を考えるとちょっと憂鬱、まさか16歳にして通勤時間に悩まされる事になるとは思わなかった。

ちなみにカンナギ少佐は実家が帝都付近にあるとの事でそちらから通っているらしく、スレア大尉は住所不定、任務外だと山とか草原とかに居るらしいが、普段何やってんだあのスライム?

犬は中間付近に『聖女』さんとの愛の巣(初めて聞いた時は悔しさで口から血が滲んだ)から、通っているとの事。モゲろ。

チビ眼鏡ことメイ少尉は俺と同じ様に帝都に賃貸を借りてるらしいが、

専ら任務外は軍研究室に篭りっぱなしで偶に寝に帰る程度らしい。もったいな。

ピース伍長は帝都ではなく、反対方向にある小さな村に住んでるらしく、

距離的にはそっちの方が近いけれど不便だから慣れないうちは帝都に住んだ方がいいと苦笑していた。

そんな隊員の住宅事情をつらつら考えていると帝都が見えてきた。

都市中央に巨大な建造物「帝城」が荘厳に建てられており、その周囲を囲む様に放射線状に建築物が広がっている。

都市は東西南北で機能が分けられており、北側が行政区、東側が商業区、南側が居住区、西側が工業区となっているらしい。

そして最も特徴的な中央の帝城だけど、機能は観光地兼議会場である。

何と皇族は住んでいない。

そもそもオスグロス帝国は帝政ではなく、議会制による統治であり、現在の皇帝は象徴としての意味合いが強いらしい。

現皇帝オスグロス13世は帝都付近にある「神域」に住んでおり、内地の慰問、国外外交等が今の役割との事。

これは数世代前の皇帝が「暗君が産まれてからでは遅い」と自分の世代でバッサリと帝政を切り捨てたかららしい。実に名采配。

ちなみに帝城お土産名物はオスグロス蒸し饅頭らしいよ、それを名物にしようとしたセンスが分からないね!


閑話休題。


「こ、これが…魔王城…」


地図に従い、居住区を歩く事十数分。遂に目的の場所に着いた訳だが…


待ち受けていた魔王城の外観は築数十年石造壁はレンガ造り三階建。

入り口の壁に可愛らしい手書きの文字で「たんぽぽ麻王城」と看板が提げられている。

漢字間違ってますよ。

想像してたものの斜め上と言うか…


「これアパートじゃん!」


それで良いのか魔王城!?


「きゃっ!? な、何ですか?」


つい漏れてしまったツッコミに敷地内で掃き掃除してた女性が驚いている。


「あっ、すいません…」


イカンイカン、危ない奴だと思われたら、今後のご近所付き合いが絶望的になってしまう。

取り敢えず驚かせてしまった目の前の女性に頭を下げる。


というか、このお姉さん。凄いものをお持ちである。

頭を下げたら目の前に巨大なメロンが二つ。E…いや、Fはあるか…?

ごっつぁんです!


「あの〜…何か御用でしょうか?」


いかん! カムバック自我、俺の将来設計消えちゃう! ハウス! 煩悩、ハウス!


「すいません、お姉さん。俺は軍部から紹介されてきた者ですが、こちらがたんぽぽ魔王城で間違いないですか?」


俺は全力の決め顔を作った。


俺の返答に一瞬間が空き、どことなく気不味い空気になってモジモジしてたら、

お姉さんは思い出した様に手を叩くと、


「あ〜、あなたが〜」


と箒を壁に立て掛けて、一度部屋に戻って行き、書類を掴んで戻ってきた。


「聞いてますよ〜、タイガくんで合ってるかしら? 念の為に紹介状もお願いします〜」


書類と俺を見比べて確認を取ってくる。

そんなマジマジと見られると照れちゃう。


「あ、はい、ハイ! そ、そうす…そうです! あ、これ!」


噛み噛みである。

いや、だってなんか恥ずかしいもん! 放っておいてくれ!

おずおずと差し出した紹介状を目の前のほんわか巨乳お姉さんはにこやかに受け取り、軽く目を通す。


「帝国軍の印章もほんものですね〜、ハイ、大丈夫ですよ」

「あ、ドモっす」


こういう時のどうもって何に対して言ってるのか分からないけど、つい言っちゃうよね。


「じゃあ、これからよろしくねタイガくん。私がここの管理人の魔王アサヒです」

「あ、よろしくお願い……はい?」


魔王降臨したし。

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