第85話 ライバル登場?

『あの日』を境に、廉は変わった。

勿論、その変化は良い方にであり、あれ程無口でクールぶってて、感情を表に出さなかった廉が、今では別人の様に明るく、誰とでもよく喋り、そして何より・・・。

穏やかな笑顔をあたしに見せてくれる様になった。

それに比例するかの様に、あたしも『自分の意思』で物事を冷静に判断しながら動く事を覚え、なおかつ。

心が穏やかで、何事にも前向きに考えられる様になった。


『手紙』は常に持ち歩いており、今も鞄の中にある。

とてもとても大事な『お守り』・・・。


廉 「柚月。」

柚月「何?」

廉 「なんか、朝からもの凄く強い視線を感じる。」

柚月「え?どこから?」

廉 「俺の斜め後ろの席から。」

柚月「廉の・・・斜め後ろ?」


あたしが不意に振り向いてみると、待っていたかの様にバッチリ目があった「斜め後ろ」の存在。


柚月「・・・おかしいな。あたし、睨まれたかもしれない。」

廉 「俺はウインクされてから、怖くて見れない。」

柚月「ウインク?たまたま目にゴミが入ったとかじゃなくて?」

廉 「ゴミ・・・。そうだよな、ウインクなんかする訳ねぇよな。」


去年は色々な事があった一年だった。

だからこそ、今年はきっと楽しい事が待ってるはず。


そんな思いは、次の日にあっさりと消されてしまった。


そして翌朝。

あたし達はいつも通り登校し、いつも通り教室へと入った途端、パタパタと組んだ両手を胸に当てながら一人の男子生徒がとてつもない形相で駆け寄って来た。


廉 「げっ、斜め後ろじゃん!!」

柚月「な、なんか怖い・・・。」

廉 「柚月、俺の後ろに下がってろ。」

柚月「う、うん。」


その男子の視線はあたしに向けられており、廉が警戒してあたしの前に立ちはだかる中、ドシンと両足を揃えてジャンプをし、廉の前で足を止めた。


廉 「柚月に何か用かよ?」

大地「名前は大地。」

廉 「あ?大地?だからなんだって・・・」

大地「あ、あのさ!!廉君、僕と友達になってよ!あだ名は「大ちゃん」で良いよ?それから今日さ、あのねっ・・・」

廉 「・・・え、俺?待て待て、落ち着け。何で俺?柚月じゃなくて?」

大地「柚月?・・・あぁん!もうっ!こいつじゃないもん。廉君が良いんだもん!!あ、でね!続きがあって・・・」

柚月「「こいつ」って言った?」


あたしを「こいつ」呼ばわりしたこの男。

名前は「だいち」と言うらしい。


廉の身長が174センチ。この男はそれをさらに上回る高身長で、図体がでかい。

その割には声のトーンが高く、何より一番気に食わないのは、何故かあたしの存在は「蚊帳の外」。

体をくねらせながら話す態度にあたしのイライラ度は更に増したが、とりあえず「除外」されてしまったものは仕方がない。

あたしは暫くの間、観客側として様子を見る事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る