第51話 胸騒ぎ

柚月「体育館にもいない・・・。」


各階のトイレ、使用していない音楽室やコンピューター室。

・・・そして体育館。どこを探してもまこの姿が見つけられない。


柚月「あ、携帯に返事・・・も、ないか。」


なんとなく胸騒ぎがする。

次第に焦りが募り、あたしは静まり返っている体育館に立ち尽くしていた。

すると・・・。


廉 「柚月!」

柚月「廉?」

廉 「お前何してんだよ!?もう授業始まって・・・」

柚月「廉、まこが朝から見当たらないの。」

廉 「陣内が?」

柚月「机の上には鞄があるし、下駄箱もちゃんと確認した。まこは学校にいるの。でも、何処を探してもいないの。」

廉 「電話は?」

柚月「したけど出てくれない。廉、どうしよう。具合が悪くて何処かで倒れてたりしたらっ・・・。」

廉 「落ち着け。お前どこ探した?」

柚月「各階のトイレに使ってない教室、そしてここ。思い当たる場所、全部だよ。」

廉 「・・・まだ一つある。」


『剣道場』

数年前から部員が集まらず、現在は廃部となり物置部屋として使用されている道場が、校内の一角に確かにある。

建物自体が古く、廃墟と化している為に誰も近付かない場所・・・。


柚月「あんな不気味な所、行かないよ。」

廉 「なら俺が行ってくる。」

柚月「ダメ。廉は授業に戻って。あたし一人で・・・」

廉 「嫌な予感がするんだよ。だから、お前一人では行かせられない。」

柚月「・・・ごめんね、廉。迷惑かけちゃって。」

廉 「陣内は柚月の大事な親友なんだろ?」

柚月「うん。」

廉 「なら、俺にとっても大事なクラスメイトだ。」


「行くぞ」

廉が先陣を切り、その跡をあたしが必死に追いかける。

向かう先は、元剣道場。

あたし達は足を止める事なく、ただ無心で走り続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る