第9話 対立
柚月「あたし、先生を支えたいです。」
桂太「え?」
柚月「サポートします。何でも言って下さい!何かありますか?」
恋愛未経験。
思い浮かぶのは、漫画の世界で登場する様な、キュンキュンする内容ばかり。
現実は、右も左も分からない恋愛素人野郎。
あたしの脳が勝手に心へと信号を送り出す。
「これが恋というもの。押して押して張り倒しましょう」と・・・。
アンテナが反応した瞬間、あたしの擬似恋愛バロメーターは、勝手に燃えたぎっていた。
柚月「先生」
桂太「何?」
柚月「好きかもです」
桂太「へ!?いや、ちょっと落ち着いて・・・。」
柚月「無理です!興奮してます!」
桂太「か、顔!それから鼻息!!近くて怖いです!!」
柚月「この想い、一曲歌ってもいいですか!!」
桂太「え、何で!?(笑)」
我を失い、半分やけくそだった。
きっと・・・いや、単なる少女漫画の読み過ぎだった。
でも、あたしは先生のあんな悲しい表情を二度と見たく無い。させたくなのは確かで。
それだけの感情で動いていた。
桂太「あの、凄く失礼な事聞いてもいい?」
柚月「はい、何ですか?」
桂太「古川さん、恋愛した事ないでしょ(笑)」
柚月「恋愛?するなら今でしょ」
桂太「誰の真似?(笑)そうかぁ、廉とはそういう関係にまだなってないんだね」
柚月「まだと言うか、この先も廉とは・・・」
クスクスと笑いながら、桂太先生はあたしの頭上を見上げた後、軽く頭をポンポンと叩いた。
柚月「え?除霊ですか?」
桂太「いや、古川さん可愛いなぁと思って。俺が同級生だったら、間違いなく古川さんを好きになってる。」
「だよな?廉。」
桂太先生の視線の先・・・。あたしの後ろには、息を切らした廉の姿があった。
廉 「柚月振り回して何やってんだよ?」
桂太「何だよ廉。お前もサボりか?」
廉 「柚月、こっちに来い。」
柚月「え。」
桂太「廉。お前、古川さん泣かしといてよくそんな事言えるな」
とても不穏な空気が流れる中、廉は今にも桂太先生に噛み付く勢い。そして、桂太先生は今までとは打って変わり、さっきと同じ様な態度を廉に仕掛け出した。
桂太「廉、お前古川さんが好きなんだろ?」
廉 「は?俺が?んな訳ねーだろ。とにかく柚月、早く来い。そんな奴に関わるな。」
柚月「桂太先生は悪くない。だって、先生は廉にしあわ・・・」
桂太「古川さん、それは言わなくていい。」
廉 「柚月の事振り回すなよ!」
柚月「違うよ廉!何か勘違いしてる!」
桂太「廉、古川さんを振り回して来てるのはお前だぞ?昔はもっと素直で可愛げがあったのに。好きだからムキになってるんだろ?」
廉 「幼馴染みだからに決まってるだろ!二度と顔も見たくなかったのに、何でこの高校に来たんだよ!!」
桂太「拓との約束を守る為に来たんだよ!!」
桂太先生にとって、かけがえのない大事な仲間。
高校生活を共に過ごし、支え合って来た仲間。
そんな人と交わした約束・・・。
桂太先生は廉のお父さんとの約束を果たす為、今、こうしてこの場に居る事を廉に伝えた。
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