第三十八時限目

そして、学校を休んでから丁度1週間後。




体が腐ってしまうのではないかと思う位1日中寝まくり、お陰ですこぶる元気になったあたしは今日からまた学校に行く事にした。




久々の制服に袖を通し、いつもよりも早く目が覚めたあたしは珍しく朝食を取った。




「今日はお母さん仕事休みだから、学校まで送ってあげるから」




「え、いいの?ごめんね」




朝、あたしが低血圧で顔色が悪いのはいつもの事。




なのに心配症のお母さんはわざわざ車で学校の校門前まで送ってくれた。




車を使えば学校まで約5分。




正門前で降ろされ、帰りは自分で帰る事をお母さんに告げたあたしは教室へと向かった。



(静かだなぁ…)




いつもより20分位早い登校。




結構不真面目な人達が多いうちのクラスには、まだ数人しか来ていない。




当然菜緒の姿もあるはずなく、あたしは自分の席に座り机の中にあった読みかけの漫画を読んでいた。



遅刻となる時間まであと5分。




次々と皆が教室に姿を現し始めた。




(菜緒はまだかな…)




そろそろと思い、あたしは廊下に出てロッカーから1時間目の教科書を取り、菜緒が来るのを待った。




そして8時30分。




1日の始まりを表すチャイムが鳴る。




(今日は休みか…?)




菜緒に連絡してみようと思い、ブレザーのポケットに手を入れた時…




「桂太っ、少しは急いでよっ!」




あくびをしながらダラダラ歩く桂太君の背中を押す菜緒の姿が遠くに見えた。




「菜緒~っ!!」




桂太君の後ろから、ちょこんと菜緒が顔を出す。




「あっ、結芽っ!」




あたしは教科書を持ったまま菜緒達の所へ走った。




「こりゃまた随分ゆっくりな登校で(笑)」




「桂太が寝坊してなかなか待ち合わせ場所に来なくてさぁ~」




苦笑しながら桂太君を見ると、まだ半分起きてないのか寝癖頭であくびをし、意識が何処かに飛んでる様だった。



「桂太君おはよっ!」




桂太君の顔の前で両手をパチンとしてみたものの、ニヤリと笑う程度で挨拶の返事は無い。



「菜緒…桂太君って寝起き悪い人?」




「今日は特に酷い。ま、昼位には再生してんじゃないかな?」




「なるほど…午前中は寝まくる訳ね…(笑)」



とりあえずあたしと菜緒は桂太君を教室まで送り届けた。




「じゃぁね、桂太」




「ん…」




「菜緒っ、担任来ちゃうよっ」




「あ、うんっ!」




桂太君のクラスを出る時に目が合ったのは最低男の磯田君。




あたしはすぐに目を反らし、自分の教室へと入った。




(磯田君…すっかり頭から離れてた…)




「結芽大丈夫?」





菜緒があたしの顔を覗く。




「うん、もう完治したよ!」




「や、磯田君だよ。今いたじゃん」




「全然平気っ!だって今思い出した位だもん(笑)」




「そっか!結芽は何でも忘れるのが早いからね~」




「えぇまぁ、それが特技ですからね」




その後、すぐ担任がやってきて出席の確認が始まった。



1時間目の授業中。




突然菜緒からメールが来た。




《拓、まだ来てなかったよね~?どうしたんだろう?》




《え?いなかった?あたし知らないなぁ》




本当は、さっき桂太君を教室に送った時に無意識に拓を探してしまっていたあたし。




《結芽は相変わらず拓に冷たいね(笑)また喧嘩でもした?》




《冷たいかな?喧嘩は会う度してるよ~》




いつもなら、拓は早めに来て大好物のコロッケパンとレモンティーを売店で買い、あたしが登校する頃には大抵廊下で他のクラスの男の子と話していた。




《まぁいいや、後で桂太に聞いてみるねっ!》



菜緒は勘が鋭い。




あたしはボロが出てしまわない様、なるべく拓の話題には深く立ち入らない様にしていた。





そして昼休み。




そろそろ調子が戻っているはずの桂太君の所へ、あたしと菜緒は足を運んだ。




昼休みとゆうと、どこのクラスも生徒はすっからかん。




あたし達は、ウォークマンで音楽を聴きながら雑誌を読んでいる桂太君を呼び、廊下へと出た。


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