二つ目と
少し待つが、沖島は目をキョロキョロさせるばかりで続きを言わない。また、ほんのり色づいている程度だった顔が、今は真っ赤に染まっている。
何を言おうとしているかは、流石の僕にもわかっている。しかし、先程までの大人びた雰囲気から一転、乙女な感じになってしまい、僕も視線のやり場に困る。
最終的に、沖島が俯いたままボソボソと喋り始める。
「……すみません。本当は、もっとすんなり、あっさり言うつもりだったんですけど……」
「うん……」
「い、いざとなると緊張しますね……。おかしいな……。こういうの、久しぶりで……。乙女を気取りたいわけでもないんだけど……」
「……うん」
「ちょ、ちょっと待ってて。すぐ戻るから」
沖島がバタバタと手を振って席を立つ。それから、一旦店を出てどこかへ行ってしまった。荷物が置きっぱなしなんだが、初対面の人に無防備過ぎないか?
今から告白される、とほぼわかっている状態で待つのは、妙にそわそわする。既に三人からの告白をされていても、こんな時間に慣れるわけもない。
待っている間に、翼からスマホにメッセージ。
『沖島さんが顔を真っ赤にして店から出てきましたが、何をしたんですか?』
『まだ何もしてないよ。とんでもない勘違いをしていなければ、告白する一歩手前でちゅうちょして、少し冷静になるために席を外した』
『承知です。キスとかされたらダメですよ』
『大丈夫』
『本当ですか? もしそんなことされたら、あたしはもう我慢しないで襲いかかりますからね』
『わかった。そんなことにならないように十分気を付ける』
『そんなにあたしとエッチするの嫌なんですか? ひどくないですか?』
『そういう話じゃない』
『だったらもっと素直にあたしを受け入れてください。そうすれば、あとはハーレム路線まっしぐらでも構いません。4Pでも5Pでも楽しみましょう』
『あんまりそういうこと書くなよ。読む方が恥ずかしい』
『光輝さんはもっと男子らしい欲望を見せてもいいと思います。パンツくらいいつでも見せてあげますよ?』
『そういうの、いいから』
『何がいいんですかよくないです。ちゃんと人類の存続に貢献するつもりはあるんですか? 世界では人口過多でも、日本では少なくて困っているんです。あたし達で少子化を食い止めましょう』
『何人産む気だよ』
『光輝さんの望むままに』
『なんか恥ずかしくなってきた。またあとで』
そんなやり取りをしている間に沖島が戻ってきて、着席。だいぶ冷静になったようで、顔は微かに赤い程度。
「すみません。お待たせしました」
「これくらいは平気だよ」
「もう、余計なことは考えずに機械的に言います。光輝君、好きです」
本当に機械的に、なんの情緒もなく、沖島が告げた。そして、肩の荷が降りた、という風に、深く息を吐く。
「こんな告白ですみません。恋愛経験ゼロでもないくせに、変に緊張してしまいました。自分で思ってたより想いが強くて、混乱してしまったようです」
「そっか……。えっと、僕は」
「待ってください! 返事は、いりません。むしろ……聞きたくありません。私が一方的に伝えたかっただけです。光輝君の側に、もう素敵な女の子がたくさんいることはわかっています。突然ろくに知らない女から告白されたところで、気持ちが動くことなんてないとわかっています。そんな期待していません」
「……そう」
「可能性はなくても、直接会って、どうしても伝えたいことでした。私のワガママに付き合ってくださって、本当にありがとうございます」
ぺこり、と行儀よく頭を下げる。つむじが綺麗だな、なんて気まずさを誤魔化す。
「これで、二つ目は終わりです。おかげでスッキリできました」
スッキリした、という割には、沖島の笑顔は陰っている。指摘はしないけれど。
「それじゃあ、ちゃちゃっと三つ目にいきますね。告白の件は、もう忘れてください」
「あ……うん」
サバサバしすぎではある。まあ、すぐには忘れられないが、意識の片隅に追いやろう。
「これが本題の、本題です。光輝君。私と組んで配信しませんか?」
「……え? それ、どういうこと?」
意外すぎる提案だった。沖島と、組む?
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