終電

終電間際のホームには僕と彼女だけで、他に人の姿はない。


ホームを照らすのは蛍光灯のみで、その頼りない光は少し風が吹けばかき消えてしまいそうなほどだ。


やがて遠くから列車の近づく音が聞こえだす。


今日、私は愛する人と、共に死ぬ。



刹那、ふと母の顔が浮かぶ。いや、母だけじゃない、今まであった様々な人の顔が浮かぶ。次から次へと。沢山と。………これが走馬灯なのだろうか?


すると極度の緊張により加速した思考の中で「まだ間に合うんじゃないか?」という言葉が脳内ををこだまし、恐怖が体をこわばらせる。


いよいよ勢いよく迫りくる列車。「やはり辞めよう」そう口にしようとし、振り返った瞬間。


腹を蹴られ後方へふっ飛ばされていた。


落下しながら、見えたのは足を振り上げた見知らぬ男と、男と手をつなぐ、最愛の彼女だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートでショートなお話し yu3l @yi3L

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ