第546話 親友の訪問③
スター商会の応接室へと皆を案内する。
結局校長先生含め、全員がスター商会目的で来たようだ。
まあ、私が目的? の人も数名いるようだけど……うん、視線が痛いよね。
これがディックなら大歓迎なんだけど、熱視線を送ってくる相手は魔法学のバンナヴィン先生とライリー先生の二人だ。
私の一挙手一投足を見逃さないようにと見つめてくる。
その上どちらが一番弟子になるかと、ライバル心までも燃やし、瞳がメラメラしているようにもみえる。
正直……
勝手にやって下さい。
という気分だが、ユルデンブルク魔法学校の教授になると決めたのだ、そうも行かないのだろう。
ううう……弟子なんか要らないよ……
やっぱり普通の生徒が良かったよー。
そして応接室内に入り、リアムが校長先生達大人組を相手にし、私とノアがディックとディックのお兄さんのジャック兄さんの相手をする。
この応接室は広いため、メイン側のソファにリアム達が座り。
私達は窓辺にある、小さめのソファセットに座る。
予定の人数であればメインのソファだけで足りたのだが、予定外の事がおきてしまったので、こればかりはしょうがない。
それにここまで来てしまった以上、帰れと追い出すわけにも行かないし。
何より皆スター商会を楽しみにしているみたいだからね。
それは会頭としてはとても嬉しい事だ。
でも、貴族の家に約束無しで訪れるのはとっても失礼な事。
私達がスター商会のものだと思って、商人として私達を下に見ているとしたら……
校長先生たち、アダルヘルムにけちょんけちょんにされそうだよね。
まあ、本当にただ来たかっただけ……の様だけどね。
困った大人たちだ。
そして楽しみにしていたであろうスター商会のお茶とお茶菓子を出せば、皆の顔がホッと緩む。
運んで来てくれたランちゃんとノンちゃんを見ても、皆驚くことは無い。
もう二人は街のアイドルだからね。
スター商会はそれ程ユルデンブルクの街に浸透している。
ランちゃんもノンちゃんも超有名人だ。
「あの魔獣は戦えるのですか?」
と、部屋から出ていったランちゃんノンちゃんを見て、二人の事を知らなかったのか、校長先生がそんな事を呟く。
他の先生たちは二人の事を知っていたのだろう。
校長先生の言葉に目を丸くしていた。
それにしても……
あんなに可愛いランちゃんとノンちゃんを魔獣だと思うだなんて!
校長先生の有り得ない言葉を聞き、ちょっと怒りを覚えた私は、もし目の前に親友のディックが居なければ校長先生を睨んでいたところだった。
ランちゃんとノンちゃんは優しい性格で子供達にも大人気。
まさか校長先生がそれを知らないとは……
その上校長先生はランちゃんノンちゃんにちょっとだけ怯えている様子だった。
校長先生! 失礼すぎですよー!
「校長先生、安心してください。あの子たちは魔獣ではありません、ララか作った魔道具なんですよ」
リアムが副会頭らしい笑顔を浮かべそう伝えれば、魔道具だとは知らなかったらしい校長先生は、狸顔についている大きな目をぱちくりさせていた。
「これでは魔道具科の先生も弟子になりたがりますね……」という言葉がハッキリ聞こえたが、そこは聞こえない振りをする。
弟子なんて取る気は私にはない。
そう、私は教育係のアダルヘルムでは無いですからね。
一生徒として……は多分もう無理なので……一教授として、これから学園生活を楽しむ予定なのです!
私が欲しいのは、弟子ではなくてお友達。
先輩、後輩関係なく、友達沢山つくるんだから。
これ以上邪魔しないでくださいませ!
「ララ様は素晴らしい才能をお持ちなのですねー……ディックにはララ様に入学後も友人と呼んで貰えるように頑張って勉強して欲しいものですねー。弟は運動は得意ですが勉強は少し苦手ですからねー……困った物です……」
「もう、兄上、余計な事言うなよー」
ディックとジャック兄さんがそんな兄弟らしい会話をする。
ちょっと拗ねた可愛らしいディックは、私の心を癒し、目の保養となってくれる。
ディックの親友として、ここはお兄さんを安心させなければならないだろう。
私に出来る事は友を応援する事!
勉強が苦手なら得意にして見せましょう!
ララ・ディープウッズの名にかけて!
この私が必ずやディックの成績を向上させてみせますわ!
「ジャックさん、ディックはとても優しくて素晴らしい子ですわ」
私はジャック兄さんに笑顔でディックの素晴らしさを伝える。
ディックは「……ララ……子って……同級生だろ……」と何やら呟き、頬を赤く染めていたが、きっと照れているのだろう。
私はそんな事は気にせず、ジャック兄さんに親友の素晴らしいところを引き続き伝えた。
「ディックは入学試験期間中、一人ぼっちだった私を支えてくれました。それにディックは、剣術でも武術でも、試験ではトップクラスでしたわ。それだけで十分に素晴らしいと思います! ですが、ディックの学業が苦手な部分が気になる様でしたら、親友の私がお手伝いさせて頂きますので安心して下さい!」
「えっ?」
「はっ?」
「ララ……試験中僕もいたでしょう……」
ディック、セオ、ノアの声が揃う。
三人とも何かを言っているが、私はジャック兄さんと会話中。
三人の事など気にしない。
ジャック兄さんは少し申し訳なさそうな表情をしながら、私の言葉に答えた。
「いや、ですが……ディックの事でディープウッズ家の姫様である、ララ様のお手を煩わせるわけには……」
「いいえ! 私は学園では生徒ではなく一教授となります。ですからディックの勉強を見ることは当然なのですよ」
「えっ? 教授ですか? で、ですが本当に宜しいのでしょうか……? その……ララ様は色々とお忙しいでしょうに……」
ジャック兄さんは校長先生とは違い、気遣いが出来る人のようで、私がスター商会の会頭であることを気にしてくれているようだ。
そう、普通の商会の会頭と言えば滅茶苦茶忙しい物。
けれどスター商会の会頭である私は名ばかりの会頭。
真の会頭は副会頭であるリアムだ。
だから気にする必要はないと、私はジャック兄さんに良い笑顔を向けた。
「ジャックさん、大丈夫です! ディックの事は親友の私にお任せ下さい! 必ずやディックを学年トップテンに……いいえ、トップにして見せますわ!」
「はああ?! ララ?! 何言ってんの?」
「あああ! ララ様にそんな風に言って頂けるだなんて……ディックは良い友人を持ちました。ララ様、本当にありがとうございます!」
「オーホッホッホッホー、ジャックさん、ディックの事はこの私にお任せ下さいませー、オーホッホッホ」
「えええええっ?!」
ジャックお兄さんに期待されご機嫌に笑う私を、ディックが捨てられた子犬の様な、そんなすがるような目で見つめてきた。
うん、うん、ディックってば、成績が本当に上がるか心配なんだね!
大丈夫! 私に任せなさい!
と、慣れないウインクをディックに飛ばせば、何故か頭を抱え、大きなため息を付かれてしまった。
どうも私のウインクは周りの評判が悪いらしい。
まだまだ修行が必要なようだ。
リアムかジェルモリッツオ国の英雄カエサル・フェルッチョ事友人のカールに指導して貰おうかなー、なんてそんな事を考えていると、私の横でいつの間にかアダルヘルム化していたセオが頼もしい発言をしてくれた。
「ジャック殿……私もララに付き添って学園へは通う予定です。勉強も剣術も武術も……私が幾らでもディックに指導いたしますよ……」
そう言ってニヤリと笑ったセオはアダルヘルムそっくりだった。
ちょっと怖いと思った私と違い、ジャック兄さんとディックは、憧れのセオの指導と聞いて私の話を聞いた時より嬉しそうな顔をしていた。
うううう、セオに親友の好感度を全部持って行かれてしまった……
ガックリと肩を落とした私の肩をクルトがポンッと叩き、「入学までレッスンの数を増やしましょうかね」と何故かそんな追い討ちを掛けてきたのだった。
ふえーん、何故ー? この話でクルトのレッスンが必要な言葉出て来たー? クルトってば、酷すぎるよー!
☆☆☆
おはようございます。白猫なおです。(=^・^=)
いやー、花粉の時期ですね。今日は風が強かったので、花粉の方はさぞかしお辛かったでしょう。白猫は……微妙なんですよね。そこまで酷くない花粉症?そんな感じな気がします。(笑)
さてさて本編もう暫く親友の訪問が続きます。時折失礼な校長先生。悪気は全くありません。天然物です。(笑)
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