第116話 閑話15 ココの一日
「ココおはよう」
ディープウッズ家で暮らす銀蜘蛛魔獣のココは、毎朝主であるララの声で起きる。
ココに声をかけながらララがナデナデしてくるのがココは大好きだ。
この前まではララとセオ一緒の布団で寝ていたのに、すっかり大きくなってしまったココは、もう二人と一緒に寝ることが出来なくなってちょっと寂しい。
ココが寝入るまでいつもララがナデナデしてくれたのが今は無いからだ、体が小さいままの方が良かったなぁとちょっと思ってしまう、まだまだ甘えん坊のココであった。
ココは今、ララが作ってくれたココ専用のクッションの上で毎日寝ている。大型犬よりちょっと大きくなったぐらいのココの為に、ララが作ってくれたのだ。
ふわふわのクッションはララの瞳と同じ水色で出来ていて、ココの体型に合わせ、まん丸い形をしている。まるでララと一緒にいるみたいな気持ちになれるので、このクッションが大好きなココであった。
「ココおはよう」
自室へ行って身支度を整えたセオがココの事を一なでした。
セオはララの護衛であり、ココの兄弟だとココは思っている。何故ならセオもココもディープウッズの森でララに拾われたからだ。
見た目はほんのチョットだけ違うけど、セオも銀蜘蛛なのかな? っとココはたまに思っているのであった。
二人から美味しい魔力を貰って、ココは朝から元気いっぱいだ。これからセオの朝練に付き合うのがココの毎日の日課になっている。
「ララは小屋に行って作業するんでしょ?」
「うん、作りたいものがあるから、今日は小屋に行くね」
主のララも日によって朝練をするのだが、今日は小屋で物作りをする様だ。なのでココとセオとそれからセオの賢獣であるモディの三人で朝練を始めた。
セオが流す汗には魔力が含まれているのでとっても美味しい、なのでココはこの朝練が大好きなのであった。
セオに糸を吐き攻撃を仕掛ける、セオがそれを避けるため剣を振るう度に魔力がココに飛んでくるのだ。
セオってとっても甘くて美味しいの!
朝練をしながらうっとりするココであった。
朝練を終えた後はセオと一緒に湯浴みをする、これもココの大好きな事の一つであった。
今のココの大きさではセオの部屋の浴槽に一緒に入るには狭くなってしまった為に、大浴場に行くのも楽しみだ。
朝は時間が無いからサッと汗を流すだけのセオがシャワーを浴びている間、ココとモディの湯舟での泳ぎの特訓が始まる。けれど間もなくここで泳ぐことも出来なくなりそうだ。それぐらいココは体が成長している、やっぱりここでもちょっぴり寂しくなるココであった。
そして湯浴みの後はココが大好きな食事の時間だ。マトヴィルが用意してくれる食事はいつも美味しい。何でも食べられるココだがマトヴィルの作った料理は格別なのを知っているのだった。
以前はララ達と一緒のテーブルの上で食事を取っていたココだが、もう大きくなってテーブルに乗ることは出来なくなってしまった。
なので今はララが作ってくれた、ココ専用の少し低い高さで出来ているテーブルで食事をしている。
「ココ、おはよう、今日も可愛くていい子ですね」
ララの母親であるエレノアがココに触れながら朝の挨拶をしてくれる、優しくて美味しい魔力がココに注がれ、とっても嬉しい気持ちになる。
その後はアダルヘルムやオルガ、アリナもココに挨拶と共に魔力を注いでくれる。ディープウッズ家の家族の魔力はとっても甘くて美味しいので、ココの大好きな物であった。
(ココ、カゾクスキ、ココ、アルジスキ)
ココがそう言うとディープウッズ家の家族は皆優しい笑顔を見せてくれる、そんな毎日の光景が大好きなココであった。
食事の後はココはララ達と別行動になる、スター商会へ仕事へ行くララにココは付いて行くことが出来ないからだ。街中で銀蜘蛛が出たと噂にでもなれば討伐の為の兵が出てしまう可能性があるからだ。
ココを守るためにもララは大きくなったココにお留守番させるようにしているのだった。やはりここでも体が大きくなってしまったことをちょっぴり寂しく感じるココであった。
「ココは今日はどうするの?」
スター商会へ行く準備をしながらララがココに尋ねてきた。ココはララとセオが店に行った後、小屋にある疑似森に行くか、アダルヘルムやマトヴィルの手伝い(ココはそう思っている)をするか、ディープウッズの森に見回りに行くのが定番になっている。
(ココ、モリイク、ココ、モリマモル)
ララがそう答えたココをナデナデするのを気持ちよく感じながら、ココは森の事を考えた。この時期は木の実が沢山実っているので森に行くのが楽しみなココであった。
ララ達を見送るとココはマトヴィルの元へと向かう、森へ行くためのお弁当をマトヴィルが作ってくれているのでそれを受け取りに行くのだ。
「おお! ココ来たか、今日はヴィリマークの肉をレアに焼いた弁当にしたぞ、森でちゃんと野菜も食べるようにするんだぞ」
そう言ってマトヴィルはララが作ってくれたポシェット型の魔法袋に焼いたお肉とパンを入れてくれた。森でココがつまみ食いをする事を知っているので、野菜を食べるようにと注意するのも忘れない。
そして最後にマトヴィルはココをガシガシっとこの屋敷の誰よりも強く撫でると、ココの事を笑顔で見送ってくれた。
その後はアリナの元へと向かう、今から出発することを伝えるためだ。ララとココ付きのメイドであるアリナには、キチンと行き先を話しておかなければならないのであった。
「ココちゃん、今日のリボンもお嬢様と同じ色でいいかしら?」
出かける前にアリナはリボンを付けてくれる。大体ララと同じ色のリボンを付けるココであるが、たまにララが白なら、ココは黒、ララが青ならココは赤と反対の色を付けるときもあって、銀蜘蛛界NO.1のお洒落女子とララに言われるのが、気に入っているココであった。
アリナにララとおそろいのリボンを付けて貰ったら、やっと屋敷を出発することとなる、糸を上手に使い、飛ぶようにして森まで行くのがココのお気に入りの 歩き? 方なのであった。
森へはモディも一緒に来る日もある。それはララとセオが店には行かず、ディープウッズ家で勉強をする日だ。モディと森に行く日はキチンと地面を歩き、モディと並んで話をしながら森に行くのが楽しみでもあった。
勿論一人での森のお散歩もココは大好きだ。まだ森に中にはお友達がいないので、木の間に蜘蛛の巣で絵を描いたり、魔獣を倒して屋敷に持って帰ったり、それから知らなかった美味しい食材を探すのもココの楽しい時間であった。
暫く木の上での遊びに熱中しているとコンソラトゥール街道の方から馬車が走る音が聞こえてきた。馬を見るのが大好きなココはその音の方へと近づいてみることにした。
(ウマ、スキ、ウマ、ナカマ)
小さな頃は屋敷に居る馬たちの上に乗って遊んだこともあるココは、優しい馬が大好きだ。ちょっとだけ食べてみたい気持ちもあったが、ララに馬は友達と聞いてからは守ってあげなければと思っていた。
走る馬車はどうやら狼に追われている様だった。だからこんなにも大きな音が森の中に響いた様だ。コンソラトゥール街道はレチェンテ国とアグアニエベ国を繋ぐ道であるため、商人等の往来があるのだが、ディープウッズの森が自然や魔力にあふれているためたまにこういった事もあるのだった。
だが、コンソラトゥール街道で襲われるという事は森の中まで入った可能性があった。道を通るだけならばエレノアの力で何の危険も無いようにしているからだ。
ココはララと森を守る約束をしているので、狼たちを退治することに決めた。決して狼をまだ食べたことが無いから食べてみたいなと思ったわけではない。
自分に隠蔽の魔法をかけ木の上から狼一体ずつを蜘蛛の糸で縛り上げていった。
そして10体の狼を縛り上げると狼たちに近づいた、話を聞くと彼らは子供を馬車の人間に連れ去られたのだと訴えてきた。
ココはそれを聞いてすぐに馬車を追いかけた。森で悪いことをする奴は許してはならないと言うのがララからの教えだからだ。
馬車の車体の屋根の上に飛び乗ると、車輪に蜘蛛の糸を吐き動きを止めた。馬達が怯えて逃げないように、馬たちには優しく話し掛ける。
(ココ、トモダチ、ココ、モリ、マモル)
馬車の中から剣を待った男達が数人現れた。馬車の中からは子狼の鳴き声が聞こえてきた。それはとても怯えている声だった。
ココは隠蔽魔法を解いて姿を現した。これだけで人間が逃げてくれたら良いなと思ったからだ。だが、人間は悲鳴を上げたがまだ大人にならない銀蜘蛛のココなら倒せると思ったのか、剣を振りかざしてきたのだった。
その剣はセオの何十倍も遅い太刀筋であった。アダルヘルムやマトヴィル、そしてセオと普段から三人の動きを見ているココにとって、この人間たちの動きはまるでスローモーションの様であった。
あっと言う間に全員を縛り上げると、ココは子狼を助け出した。
(ワルイコ、ダメ、ナカマ、タスケル)
人間たちに忠告をするとココは子狼を背に乗せて、人間をそのまま糸で縛り上げたままでその場を離れた。剣事縛り上げたのでそのうち糸を外すことは出来るだろうが、この森で悪事を働いたら、お仕置きが必要なのだと小さなココにも分かっているのであった。
先程縛り上げた狼たちの糸を解いてあげ、ララから貰った魔法袋からポーションを出すと狼たちに飲ませてあげた。剣による傷が出来ていた狼もいたが、ララが作ったポーションですっかり元気を取り戻していた。
(森の守護者様、子を守って頂き感謝いたします)
(ココ、ナカママモル、ミンナ、ココ、ナカマ)
狼達はココに感謝すると森へと帰っていった。ちょっぴり味見してみたかったなと、少し残念に思ったココであった。
森での遊びも終え夕方になったので、ココはディープウッズの屋敷に帰ることにした。お土産には木の実を沢山摘んだのでマトヴィルが喜んでくれるだろうと、ココは嬉しい気持ちになった。
屋敷に戻るとララとセオも丁度帰って来たところであった。今日の森での出来事を二人に話ながらマトヴィルのいるキッチンへと向かった。
マトヴィルはお土産をとても喜んでくれて、今夜の夕食にココの好きな熊のお肉を付けてくれると約束してくれた。
「ココ良かったね、夕食も沢山食べましょうね」
(ココ、ゴハンスキ、ココ、タクサンタベル)
夕食と湯浴みを終えると、ララとセオとゆっくりと部屋で過ごす。
この時にララがしてくれるブラッシングがココは気持ちよくて大好きだ。
「ねえ、セオ、ココまた大きくなった気がする」
「本当だ、もうすぐこのクッションも使えなくなりそうだね」
「はぁー、もっともっと大きくなったらココの背中に乗せてもらえるかな?」
「うん、ココだったら上手にララを乗せられると思うよ」
ララのブラッシングに気持ちよくてウトウトしながらも、二人の会話を聞いていて、ココは早くもっと大きくなってララを背中に乗せて、森の中を探検したいなと思い、ココは大きくなるのが待ち遠しくて嬉しく感じたのであった。
こうしてココの充実した楽しい一日は、今日も過ぎて行くのであった――
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