《聖女パーティー》エルマ視点29:あんた、何しに行くつもりよ!?


 セレイアと別れ、港町――イトルへと戻ってきたあたしたちは、これからどうするかを話し合っていた。


 セレイアの話だと、馬鹿イグザたちは浄化だかを行うためにラストールへと戻ったらしいのだが、このままではいつまで経っても追いつける気がしやしない。


 というか、そもそも向こうは空を飛べるのよ!?


 そんなの陸路で追いつけるはずないじゃない!?


 不公平よ、不公平!? と内心異議を申し立てるあたしだが、たとえ今馬鹿イグザに追いついたとしても、あいつを見返すことは出来ないだろう。


 だってこっちのパーティー、豚しかいないし!?


 てか、あたしの女神化計画も中途半端極まりないし!?


 なんなのよ、これ!?


 よくよく考えたら全然進んでないじゃない!?


 今あたしに出来ることとか、赤ちゃんを産むか、誰かに産ませるか、空気でおっぱい膨らませることくらいなんですけど!?


 意味分かんない!? と頭痛を覚えそうになりながらも、あたしは努めて冷静に尋ねる。



「というわけで、あなたの意見も伺いたいのですが、今後の旅路についてどう思われますか?」



 もうこうなったら豚の意見だろうと参考にするしかないわ!


 大いに感謝しなさいよね!



「そうですな、確かに御使いさまのことは気になりますが、今までに三柱の女神さま方にお会いしてきましたし、このまま残りの女神さま方のもとへ行くのはどうでしょうか? そうして全ての女神さま方のお力を賜った後、件のイグザさまにお会いになられるのがよいのではないかと」



「なるほど。確かにあなたの仰るとおりかもしれませんね」



 え、めちゃくちゃまともな意見じゃない!


 正直、びっくりしたんだけど!


 もしかしてシヌスさまに煩悩吸われたおかげで、ちょっとは真人間に近づいたんじゃないの?


 まあ人間じゃなくて豚なんだけど。


 でも確かにあんたの言うことも一理あるわ!


 だって女神はまだまだいるんだもの!


 そうよ、まだ諦めるのは早いわ!


 なかなかやるじゃない、豚!


 そう内心豚を見直していたあたしだったのだが、



「ええ。テラさまにトゥルボーさま、そしてシヌスさまと、皆さま実にけしから……素晴らしい女神さま方ばかりでした。これはもう残りの女神さま方もきっとけしから……素晴らしい女神さま方なのではないかと!」



「……」



 おい――おい。


 ぐっと拳を握る豚に、あたしは内心氷点下な視線を向ける。


 いいこと? 豚。


 あたしはね、今あんたを褒めたの。


 珍しく人間に戻してあげようかと思えるくらい感心したの。


 なのにそう、あんたはおっぱいのことしか考えていないのね……。


 ……。


 って、そんなにデカ乳がいいならこれでも見てぶひぶひ言ってなさいよ、この変態巨乳マニア!?


 ぼんっ! とあたしは勢い任せに胸部エアバッグを展開させる。



「むむ!? よもやこんな町中で命の危機が!?」



 ぼんっ! と同じく爆乳化する豚。



「……」



「……」



 え、何この不毛な時間……。


 ふと冷静になったあたしは、目の前で乳をぼんぼんさせながら警戒している豚と、巨乳化している自分の胸元に、死んだような瞳を向けていたのだった。

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