《聖女パーティー》エルマ視点21:え、そのスキルいる!?


 とにもかくにもトゥルボーさまの警戒を解くことに成功したあたしたちは、いよいよ本題に入ることにした。



 ――そう、可憐なあたしの〝女神化計画〟である。



 正直、テラさまからもらった力は武技と術技以外期待外れだったので、トゥルボーさまには大いに期待しているのだが、ただ一つだけ不安な要素があった。



 それは彼女が――〝子ども好き〟だということである。



 子ども好き……子ども……赤ちゃん……妊娠……完全受胎!?



「~~っ!?」



 思い出したくもない悪夢があたしの脳裏を過ぎる中、しかしあたしはかぶりを振ってその杞憂を払拭する。


 ――大丈夫。


 落ち着くのよ、あたし。


 何故ならトゥルボーさまは〝風〟と〝死〟を司る女神。


〝生命〟を司るテラさまとは真逆と言っても過言ではない神さまなのだから。


 ならばきっと〝即死〟とかそういう強力なスキルが与えられるに違いないわ。


 ふふ、〝即死〟なんて最高じゃない。


 全てはあたしのご機嫌一つ――誰もあたしに逆らえなくなるわ。



 ――そう、あの馬鹿イグザでさえもね!



 そんな期待を胸に、あたしはトゥルボーさまの御前へと跪く。



「どうか世の安寧のため、私にあなたさまのお力をお与えくださいませ」



「ふむ、まあいいだろう。子どもらも貴様らには懐いているようだからな。望み通り我が力を与えてやる」



「ありがとうございます! 心よりの感謝をあなたさまに」



 そう恭しく頭を下げるあたしだが、当然内心はにやにやが止まらなかった。


 ふっふっふっ、ついにやってやったわ!


 これであたしもクールビューティーな死の女神よ!



      ◇



 と、そう思っていた時期があたしにもありました。


 いや、もちろん武技と術技はもらったのよ?


 風属性のめちゃくちゃ強力なやつ。


 でも即死はくれませんでした。


 というか、スキル自体くれませんでした。


 じゃあ何をもらったのかと言うと、



 ――ぼんっ!



「おお、凄い! これで胸部へのダメージもばっちりですな!」



 一瞬で膨れ上がったあたしの胸元に、豚が歓喜の声を上げる。



「……」



 最中、あたしは死んだ目で自分のステータスを見やった。



『サブスキル――《エアバッグ》:任意のタイミングまたは緊急時に自動で風の防御壁が展開される』



 いや、なんなのよこれ!?


 胸元の成長がちょっとだけ遅れ気味なあたしへの嫌がらせかなんかなんじゃないの!?


 だってそう思いたくもなるでしょ!?


 腕――ぶひゅー。


 足――ぶひゅー。


 お腹――ぶひゅー。


 背中――ぶひゅー。


 頭――ぶひゅー。



 胸――ぼんっ!



 いや、なんで胸だけ服が盛り上がるのよ!?


 あきらかにわざとじゃない!?


 どういうつもりなのよあの子連れ女神!?


 そんな気遣い頼んでないわよ!?


 しかも。



 ――ぼんっ!



「おお、見てください! 私も聖女さまとお揃いですぞ!」



 ――ぼいんぼいんっ。



「え、ええ、そうですね……」



 なんでそっちまで同じことになってんのよ!?


 てか、あんたあたしより胸大きいんだから必要ないでしょ!?


 ……。


 って、そうじゃないわよ!?


 なんで豊胸スキルみたいな話になっちゃってんのよ!?


 あーもうあったまきた!?


 こうなったら次の町からあたし胸ぼいんぼいんにして行ってやるんだから!


 絶対ぼいんぼいんにして男どもの視線をがっつり集めてやるんだからね!


 と、あたしはもうぶっちゃけやけくそになっていたのだった。

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