《聖女パーティー》エルマ視点7:え、槍の聖女って誰よ!?


 まさに人生最大の嵐を抜け、あたしたちはやっとの思いでラスコラルタ大陸の港町――ファミーラへと到着することが出来た。


 もしまた今度船に乗ることがあった暁には、出発早々あたし最速の抜剣術を以てあの豚を昏倒させてやろうと思う。


 そしてタルにでも詰め、貨物室にでもぶち込んでおいてやる。


 絶対にそうしてやる。


 なんなら食材として使ってくれてもいいわよ?


 あたしは死んでも食べないけどね!



「ここがラスコラルタ大陸の港町ですか。まさに新たなる冒険の始まりという感じがしますな」



「そ、そうですね」



 って、何どや顔でいっちょ前の冒険者面してんのよ!?


 あんたさっきまで船室でグロッキーになってたじゃない!?


 てか、聖女のあたしより目立とうとしてるんじゃないわよ!?



「さて、では私は荷物を宿に置き次第、ギルドへ聞き込みに行ってきますね」



「ええ、そうしてもらえると助かります。私も町の方にお話を伺ってきますので」



 ともあれ、そんな感じでポルコと別れたあたしは、彼の姿が見えなくなったことを確認した後、近くのベンチにどっかりと腰を下ろして嘆息した。



「……はあ」



 あ~疲れた……。


 せっかくマグリドの温泉で短時間ながらもリフレッシュ出来たのに、この仕打ちは一体なんなのよ……。


 結局ドラゴンスレイヤーも消息不明だし、豚男は強制的にパーティー入りしてくるし、悪夢のような船旅だったし……。



「それもこれも全部あの馬鹿イグザがあたしを捨てたせいだわ……っ」



 ぐっと唇を噛み締め、あたしは再び怒りに燃える。


 大体、あの出来損ないは今どこをほっつき歩いてるのよ。


 幼馴染のあたしがこんな目に遭ってるのに、それを見過ごしてていいわけ?


 まったく、腹が立つったらありゃしない。


 でもまあいいわ、と立ち上がり、あたしは決意を新たにする。


 新しい大陸にも到着したことだし、心機一転――気合いを入れ直していくわよ。


 目指すのは武術都市――レオリニア。


 そこに向かったというヒノカミさまの御使いを、必ずやパーティーに加えてやるんだから!


 そうあたしが内心勢い込んでいると、ふいに旅人らしき人たちの会話が耳に飛び込んできた。



「――しっかし今回の武神祭は凄かったよな。まさか〝槍の聖女〟が出てくるとは思わなかったもんな」



 ……はっ?


 槍の聖女?


 え、聖女ってあたしのほかにもいたの!?


 いや、まあ《剣聖》のほかにもレアスキルがあるとは聞いたことあったけど……。


 微妙にショックを受けるあたしだったが、衝撃はそれだけに留まらなかった。



「――ああ。しかもそれを倒したあの炎使いも凄かったよな。次々に武器を変えちまってさ」



 ……えっ?


 てか、負けてんじゃない槍の聖女!?


 え、聖女に勝てる人間とか聞いたことないんですけど!?


 ちょ、どこのどいつよそれ!?



「もし! そこの方々!」



「「うん?」」



 ショックはショックであったが、逆にそいつを仲間に出来たらという期待に、あたしは胸を躍らせていたのだった。

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