世間の風潮から断絶された山奥に、ひっそりと佇む金峰村。
主人公である篝はその牢屋で目を覚ました。
彼は、村の祭事に纏わる陰鬱な災禍の生贄として捕らえられたのである。
しかし篝は理不尽な現状に屈しなかった。
迫る刻限の中で僅かばかりの自由を駆使し、彼に同調する個性豊かな協力者達の力を借りて、村の謎に追求していく。
しかし深みに潜れば潜るほどに新たに現れる謎。影のようにチラつく、ここには居ない誰か。
徐々に浮き彫りになっていく、幽世にも似た異質な領域に青年は震撼した。
しかし、明かされたその背景には、邪悪、憎悪とは別に人間としての情愛と悲懐があった。
最後まで読んだ人はもう一度、読み返してみてほしい。
序章の言葉が誰のものであったのか。ふとした言葉がどんな意味を持っていたのか。
それを知れば、当時とはまた違った感情を覚える事になるだろうから。
閉鎖的かつ古い因習が残る山奥の村、金峰村に攫われ、土着神に捧げられる神楽を舞うこととなった主人公、篝。村で出会った協力者たちと共に、村が抱える秘密へと迫っていくが、彼自身や協力者たちにもまた秘密があり――?
読みやすい文を追っていくうち、登場人物たちの事情や世界観が少しずつ明らかになってきたかと思いきや、かなり気になる新たな謎が残されていく。読み進めるほど次話を求めてしまい、はまり込んでしまう作品。徐々に明らかになっていく謎、唐突に明るみに出る謎とその答えは驚きと、じんわりと溢れる切なさを与えてくれます。
ダークでミステリアスなだけではない、美しく切ない伝奇物語。人を好いた罪を背負ったのは誰か、混ざり合う謎の行方はどこに向かうのか。あなたの目で確かめてみてください。