第3話 俺別に転生しないよ?

 五時間目。それは学生にとって天国であり地獄でもある時間だ。

 教室の窓から射す暖かな日差しがお腹いっぱいの生徒たちを眠りという名の天国へと誘う。

 同時に、

「田中ー!今寝てたよな?ここ後でテストに出すからなー」

 一番前の真ん中の席なのに堂々と寝ていたモブが今先生に怒られた。

「え、べ、別に寝てなんかないっすよ!ただ目を閉じて今日(作者の世界では11月3日)誕生日のバ〇ドリガールズバンドパ〇ティーの大〇麻弥ちゃんの事考えてただけですよ!」

 まぁ…推しのこと考えちゃうのはしょうがないよな。

「…………お前麻〇ちゃん推しなのか…?」

 先生が静かに言う。

「?……はい、そうですけど…」

「だよな!やっぱ麻〇が一番だよな!」

 あんたもバンドリーマーだったんかい!

「よしお前ら!今から大和〇弥ちゃんについての授業するぞー」

 数学の授業からキャラの授業に変わりました。

 クラスのあちこちから「よっしゃ!数学終わりー」みたいな声が聞こえてくる。

「まず大和〇弥ちゃんとは…」

 ガチで始めちゃったよ…。

 このままだとバ〇ドリを知らないでこれを読んでくれている人が「何だこの小説。

作者とこの小説おもんな死ね」って言ってしまう。

 この物語の主人公として何とかせねば!


 十分後。

「いいかー覚えておけ!イ〇×麻〇のカップリングは神!ちなみにこの小説の作者は

〇聖×〇弥が好きだぞー」

「先生これテストに出ますか?」

「もちろんだ!パスパレのバンドストーリー、一章と二章の内容を記述で答えさせる問題も出すからなー」

「先生アフグロは?」

「アフグロ範囲外だ。今回のテスト範囲はパスパレと集合と論証のところだからなー」

「はーい」

 ダメだこの小説。

 作者の頭がおかしいせいで小説家になろうに投稿してる小説だけじゃなくてこっち(カクヨムのほう)にも影響が出てる。

 く!俺はバ〇ドリも好きだけど百合モノのラノベとかマンガが好きなのに……。

 はっ!

 俺は思い出した。

 今見てるアニメ『安達〇しまむら』のことを。

 確か二人は卓球場で授業をさぼってるんじゃなかったっけ…。

 そうだよ!俺も今から卓球場に言ってさぼって…あわよくば美少女とエンカウント!

 一瞬姉さんが頭の中でよぎったけどラブコメだったらやっぱり同じクラスの美少女とかだもんな!

 姉さんがメインヒロインだなんて…。

 俺は椅子から立ち上がる。

 卓球場へ行くために。

 が、しかし俺はあることに気づいた。

 (俺の学校、体育の授業で卓球やることあるんだった!)

 もし俺が卓球場に行ったとき授業をしていたら、俺が授業をさぼってることがバレてしまう!

 どうする…。

「おいどうした?」

 先生が立っていた俺を見る。

「ん?あ、すいません何でもないです!」

 くっ!どうする…考えろ主人公!

 保健室は…なんか家に帰れって言われそう。廊下を歩いている?それはただの不審者。………ん?待てよ学校が舞台の小説とかマンガだとよく使われていいるところがあるではないか!

 そう!屋上だ!

 作者の高校は屋上閉鎖されてるけどうちの高校は絶対に空いている。

 なぜかって?

 それは…よくある異世界転生チートモノってさーご都合主義ばかりじゃーんだったらこの小説もご都合主義でよくね?

 あ、俺別に転生しないよ?

 ここ伏線とかじゃないからな?

 あるラノベの一巻の最初の方にはこんなことが書いてある。

『漫画とかでは学校の屋上でサボっている生徒を見かけるけど、実際は開放されている学校なんてまずない。屋上で昼寝なんかしたら肌が日差しに焼けて大変だろうし。』( 入間人間様 電撃文庫『安達としまむら』第一巻より)

 日焼け?知るか!俺はそんなこと気にしない!あと、うちの学校の屋上は開放されてんだよ!

 なぜならぁ!この小説は!ご都合主義だからだぁ!!!

 ってことで。

「先生!体調悪いのでおく……保健室行ってきますね!」

「語尾に!つけてる時点で元気そうだがまぁ行ってこい」

「はい…ありがとう…ござい…ます…」

「いや病弱なふりはいいから」

 そう言って先生は講義を続けた。

 俺はにじみ出る笑顔を抑えながらクラスを出る。

 俺ら生徒の教室があるHR棟の階段を一番上まで登る。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 階段キッツ!

 もう屋上行かねえわ!

 最後の力を振り絞り屋上てんごくへの扉を開ける。

 扉を開けると当たり前だけど生徒はいなかった。

 割と広くて視界の右端にはソーラーパネルが何個かあった。

 高めの柵が設置してあって転落事故が起きないようにしてあった。

 日の当たるところまで歩く。

「それにしても……」

 屋上から見える景色はいつもよりきれいに見えた。

 雲一つない空に学校の桜やら近くにいっぱいある田んぼやらがあって心が和む。

 なるほどな。屋上が人気なのはこーゆー理由か。

 屋上また来よう。

 景色を目に焼き付ける。

 ずっと立っていたから座りたくなった。

 俺はソーラーパネルの裏の空いたスペースで座る。

 ちょっと下を向くと特別棟(生物実験室とか美術室があるところ)で授業を受けている生徒が目に入った。

「いやーみんな真面目だなー」

 少しだけ罪悪感が沸いたけど心の隅に追いやって、この時間を楽しむ。

 ちょっとだけ寝ようかな。

 目を瞑る。

 意識がだんだん遠くのどこかに行くっていうか意識が溶けて落ちていく。

 この感覚嫌いじゃない。

 


「おーい、おーいおきてー洸ぅー」

 誰かに呼ばれている。

 何度も聞いた柔らかくて心地の良い音。

「おーいもう七時間目だよー」

 あれもうそんな時間なのか。

 しょうがない。

 俺は伸びをして固まった体を伸ばす。

 眠い目をこすって目を開けると、

「あ、やっと起きた」

 黒い日傘をさした姉さんがいた。

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