第392話 親戚からの電話

リョウは兄ジュンから手紙を受け取っていた。

「結婚式?」

「そうみたいだな、実家に届いてたみたいだが、お前の住んでる所がわからなくて俺に来たぞ。

せめて実家には何処にいるか住所教えておけよ。」

一応、東京に来たときに住んだ家の住所は教えていたのだが、既に引き払っていた。


「あはは・・・」

「笑って誤魔化すな、それよりどうするんだ?」

「う〜ん、結婚式か・・・」

俺は少し考える、送り先の親戚はあまり付き合いが無い、歳は近いが、血の繋がり的にも結構遠いのだ・・・

「兄貴はいくの?」

「残念だがお前だけに届いているみたいだ、まあ、お袋の従兄弟の子供だろ?行く謂れは無いよな。」

「たしかにね、じゃあ俺も不参加にしようかな。」

俺はあまり気乗りのしない話だったので断りの返信を返したのだが・・・


『リョウさん!お願いします、少しでいいんです、結婚式に来てください!』

結婚する当人、水元ハジメから電話が来るのだった。

「ハジメくんだったかな?あまり顔も合わせてない俺が行くのも違うような気がするんだけど。」

『は、恥を忍んで言うんですけど・・・

相手の親がリョウさんの事を知ってまして、顔合わせの時に非常に喜んでしまいまして・・・』

ハジメは言葉に詰まりながら話し始める、

どうやら、源家に繋がる俺と縁戚になることを喜び過ぎて、ハジメとしては否定しきれずに俺に泣きついてきたという話だった。

『お願いします、遠いとはいえ親戚なのは本当の事でしょ、少しだけ顔を出してくれるだけでいいんです。』

俺が気乗りしていない事に気づいているのか必死になって頼み込んできている。


俺も遠いとはいえ親戚が頼みに来る事に否と言いにくく。

「わかったよ、参加させてもらうよ。」

『ありがとうございます。』

「礼はいいから、それで式は何処であるの?」

『招待状をもう一度送るけど、京都であるんだ。』

「京都か、了解したよ。」

『本当にありがとう。』

ハジメからは電話を切るまで感謝の言葉が何回も続いていた。


「さて、結婚式に出るならスーツを・・・はて?スーツは何処においたかな?」

俺は結婚式に使う用のスーツがあったはずなのだが、度重なる引っ越しで何処かにいっていた。


「ふむ、折角だから、新調するのも悪くないか。」

見つからないのは仕方ない、俺は新しく作ることを考える。

「ミズホ、結婚式に着ていけるスーツって、どんなのがいいかな?」

自分の服のセンスに自信のない俺は現役大学生のミズホに聞くことにする。

きっと、俺よりセンスがあるだろう。

「リョウ兄、結婚式に出るの?」

「遠い親戚のだけどね。」

「ああ、リョウ兄、有名になったから。」

ミズホは状況を察するのだった。

「そうみたい、相手側が期待しているみたいだからね、少し協力するつもり。」

「それならアズサさんに頼んだほうがいいかも、アズサさーん、ちょっといいかな?」

ミズホはアズサに説明している。


「わかりました、リョウ服を作りましょう。」

「ア、アズちゃん何でそんなに気合が入っているの?」

「折角のリョウのスーツ姿ですもの、いろいろ試してみないと。」

「私も色々着せてみたい。」

アズサとミズホは意気投合して楽しそうにしていた。

俺はこれから何時間着せ替え人形と化すのか、恐怖で震えるばかりですあった。

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