第391話 ホラー映画
「ミズホ、これは何なのよ?」
シモはブルーレイが並んでいる棚からホラー映画を取り出す。
「あっ懐かしいですね、昔に話題になった映画ですよ、シモちゃんも見てみる?」
「うにゅ?面白いのよ?」
「人それぞれだけど、好きな人は好きかな?」
「うにゅ、見て見るのよ。」
シモはみんなで見たまでは良かったのだが・・・
その夜
「うにゅ、目が覚めたたのよ・・・トイレに・・・」
ブルル!
トイレに行こうと思うが寝る前に見た映画が思い出される・・・
「う、うにゃ、シモは怖くなんてないのよ。
たぶん、きっと、お布団から出たくないだけなのよ。」
シモはもう一度頭から布団をかぶる。
しかし、一度意識した尿意は無くなったりしない。
「うにゅ・・・トイレに行きたいのよ、でも、行けないのよ。
・・・駄目なのよ、オネショは恥ずかしいのよ!」
シモは勇気を出してトイレを目指す。
気持ちは魔王に挑む勇者の気持ちだった。
シモは壁伝いに恐る恐る、一歩ずつ歩く、気配探知は全開だが、映画でみた幽霊は何処から来るかわからない。
シモは涙目になりつつも、少しずつ歩くがそこでふと気付く、一人で歩くから怖いのだと。
「タマ来るのよ。」
「キュー♪」
呼ばれたたまは嬉しそうにシモにかきつく、シモもタマが現れた事で心にゆとりが出きた。
「タマ、暗いから明かりを出すのよ。」
タマは言われるままに火の玉を出す。
「明るくなったのよ、これで安心なのよ〜♪」
怖いながらも少しだけゆとりができ、トイレを目指す。
しかし・・・
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!火の玉!女の子のゆ、ゆうれい!」
メイドの大きな悲鳴が聞こえる!
「ふにゃぁぁぁ!!ごめんなさい、シモは良い子にしてるのよ!
幽霊さん来ないでくださいなのよ!」
シモは座り込んでしまう。
タマはシモを守るように周囲を警戒する。
「なんだ?何事だ?」
あまりの悲鳴にリョウが最初にやって来る。
すると腰が抜けたメイドと座り込んたシモ、そして、やたら警戒しているタマがいた。
「何があったんだ?」
俺はまずはメイドに聞くと、
「廊下に火の玉が浮かんでました!それと小さな女の子の姿が・・・間違いありません、嘘は言ってないんです!信じてください。」
メイドは混乱しつつも見たものを伝えてくる。
そして、俺はタマと視線が合う。
「あー、もう大丈夫、火の玉の原因はわかったし問題ないから。
誰がこの子を部屋まで連れて行ってあげて。」
騒ぎに集まってきたメイドに倒れた子の事を頼み、シモの元に近付く。
「シモちゃん、座り込んでどうした?」
「リョウ兄、シモは良い子にしてるのよ!
だから、幽霊さんには帰ってもらってほしいのよ!」
シモは震えて訴えかけてくる。
「大丈夫、もういないから、立てるかな?」
俺はシモに手を差し伸べる。
「うにゅ、だいじょう・・・ばないのよ!!」
「うん?どうした?」
「ど、どうもしてないのよ、リョウ兄はお部屋に帰るのよ!」
「いや、さすがに座り込んだ子供をそのままにしておけないよ、ほら。」
俺はシモに一歩近づくと、スリッパ越しに濡れた絨毯の感触があった。
「シモちゃん、これは何かな?」
「ち、ちがうのよ!これは幽霊さんの涙なのよ!」
「そう?じゃあ、立ってもらえるかな?」
「た、立てない乙女の事情があるのよ!」
「正直にいいなさい。」
「世の中には言いたく無いことが沢山あるのよ。」
「はいはい、リョウくん!デリカシーのない事は止めなさい。
部屋に帰って。」
アズサは俺とシモの話を聞いて事情を察したようだった。
「後は任せていいかな?」
「最初から呼びなさい。さあ、シモちゃん、まずはお風呂にいこうかな?
お姉ちゃんと一緒に入ろうか?」
「シモは違うのよ。」
「うんうん、わかってるからね。
でも、ホラー映画はもう止めとこうね。」
「シモは怖くなんてないのよ!でも、もう見ないのよ・・・」
アズサはシモを連れて風呂に行き、メイドは手際よく絨毯を替えるのだった。
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