第352話 ヒカルの治療
「さて、じゃあ始めるよ。」
俺はヒカルをベットにうつ伏せに寝かせる。
「ヒカルくん、痛いかも知れないけどなるべく動かないで。あと、痛かったら枕を握りしめて耐えてくれるかな?」
「あ、あのどれぐらい痛いのでしょうか?」
「それは個人差があるからなぁ~気持ちいいと言う人もいれば、歯医者の注射の方がまだましと言う人もいるんだ。」
「あれ、それぐらいですか?」
「歯医者の注射は痛いだろ?」
「いえ、もっと痛いのかと・・・」
「まあ、個人差はあるからね。さて始めようか。」
「はい!」
俺はまず触診を始める。
そして、1ヶ所ずつ印をつけていく。
「あの~足の怪我なのに背中もやるのですか?」
背中にも印をつけていたから気になったようだ。
「そうだね、気の流れを改善して治す方法だから全身をする必要があるんだ。
そして、一回したら体がまた変化するから次回はそれを治す、それを繰り返して良くしていく方法なんだ、だから時間がかかるんだけどね。」
俺は話ながらも針を打つところを決めていく。
「さて、こんな所かな?そろそろ針を打つけどハクさん、ヒカルくんいいですか?」
「宜しくお願いします。」
「なるべく痛くしないでください。」
「それはわからないな、さあ打つよ。」
俺は最初の針を打ち込む、
「あれ、痛くないです。むしろ気持ちいいです。」
「おや、ヒカルくんは大丈夫な側みたいだね、それなら続けていくよ。」
それから俺は24ヶ所に針を打ち込んだ。
「どうだい、痛くはないかい?」
「いえ、気持ち良すぎて・・・ホントに針が刺さっているんですか?」
「刺さっているよ、ねぇハクさん。」
「ああ、ホントに痛くないのか?見ている俺の方が痛そうに見えるのだが・・・」
「全然痛くないよ、えっ、そんなに刺さっているの?」
ヒカルは思わず動きそうになる、
「ヒカルくん動かない。あと5分じっとしてて。」
「はい、すいません。」
だいたい5分過ぎてから、俺は針を外す。
そして、全身を再度確認・・・
「まあ、一回目だし、こんな所かな?これを何度か繰り返して行くけど続けて行けそうかい?」
「全く問題ありません。」
「ヒカル、ホントに痛くなかったのか?」
ハクは何度も聞いている。
「父さんホントに痛くないんだ、信じてよ。」
ヒカルがハクに説明しているなか、
「さて、ヒカルくん、少し歩いてみようか。
だいぶ変化はあると思うよ。」
「はい。」
ヒカルが立ち上がり少し歩くと・・・
「えっ、何これ、歩きやすい。」
「ヒカルくんはずっと怪我を庇って歩いていたから体内が澱んでいたんだそれを循環させたから歩きやすくなっているんだ、
ただ怪我が治ってる訳ではないから無理はしないようにね。
あと、この針は毎日打つ訳じゃないから、ヒカルくんの体調や気の流れを見て随時やる感じだと思って欲しい。」
「はい。わかりました。」
「すごい、息子が普通に歩いている・・・」
「そうですね、ヒカルくんは怪我を庇って少し変に歩く時がありましたからね。それが今はなくなっているでしょう。」
「リョウさん!ありがとうございます。これからも息子の治療をお願いします。」
「いいよ、これも何かの縁だし。ちゃんとサッカー出来るようにしてあげるよ。」
「リョウさん!またサッカー出来るんですか!」
「その為の治療だろ?ちょっと時間がかかるけど、その間のサッカーはなるべく控えるように。」
「なるべくなんですか?」
「やらないほうがいいけど、どうせ、少しぐらいはボールが蹴りたくなるだろ?
全開で走ることは止めとく事とサッカーしたあとは翌日でもいいから必ず俺の所に来て報告と治療を受けるように。
怒ったりはしないよ、ただ完治は少し遅くなるけどね。」
「はい、なるべくしません!」
「こら、ヒカル!そこは絶対しませんだろ?」
ヒカルの答えにハクが叱る。
「まあまあ、ハクさん、俺もサッカーやってますから気持ちはわかるんですよ。
一回ぐらいで重傷になるような事は無いと思うけど、くれぐれも違和感を感じたらすぐ止めるようにね。」
「はい。」
「じゃあ、もう服をきていいよ。」
ヒカルは服を着ている中、ハクが少し不安そうに聞いてくる。
「あの、治療代ですけど、こんなすごい治療いくらかかるのですか?」
「えっ?ただですよ、資格も無いのにお金なんてとれませんよ。」
「しかし、こんな神憑りな医療聞いた事もない。」
「なら、感謝の気持ち分を困っている人に寄付してあげてください。」
「えっ、そんなのでいいんですか?リョウさんになんの得もないじゃないですか?」
「今回、俺はたまたま縁が合って、怪我で困っているだろうヒカルくんを治す事にしました。
なら、ハクさんも困っている人に手を差しのべてください。それでいいですよ。」
「あなたはなんて人だ・・・」
ハクは感動で涙を流していた。
「父さんどうしたの?」
着替え終えたヒカルが泣いているハクの所にきた。
「俺が泣かした!」
俺は胸をはりヒカルに告げる。
「リョウさん、何してるの?」
ヒカルはあきれるように言った。
「ヒカル、違うんだ、リョウさんの言葉に感動してな・・・
流石、世界に名を轟かす人は器が大きすぎる。私が如何に矮小な存在かがわかったよ。」
「ハクさん、俺を持ち上げすぎだし、自分を卑下しすぎだよ!」
「ホントに父さんどうしたの?それにこんなところで泣かれてもリョウさんに迷惑じゃないか。」
「ああ、そうだな、リョウさん金銭はともかく御礼はまた後日いたします。」
「御礼はいいのに、あっ、何処かで美味しいもの見かけたら教えて、それぐらいでいいよ。」
「ホントにリョウさんは・・・わかりました、見つけたら持ってきますよ。
驚くようなものを御用意いたします。」
俺は不安そうに言う。
「・・・食べれる物にしてよ。」
「何処を心配しているんですか!大丈夫です。美味しいものを差し上げますから。」
こうしてハクとヒカルは帰っていった。
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