第349話 コーチになってみる。
俺は指導を頼まれた中学生に教えていく。
マンツーマンというわけにはいかないので、ボールを蹴らし、気になる点を指導していく。
「君はトラップの受け方が上手いけどもう一歩上にいこうか。」
「上?」
「足元に置きすぎてるよ、受けたあとどうしたいかもっと考えてボールを受けてみて。」
「はい。」
トラップの上手い子に声をかけた後、シュート練習に精を出す子に声をかけた。
「君はFWなのかな?名前は?」
「はい!シンジといいます!」
「じゃあ、シンジくんはもっと自分の得意な形を作るべきだよ。」
「得意な形?」
「君は良く言えば何でも出来るけど、悪く言えば上のレベルに通じない。君の誰にも負けない形を作るべきかな、そうしたら他のプレーも生きてくるから。」
「でも、自分は何が得意かわかりません・・・」
「うーん、じゃあ、ちょっとやってみようか、誰かディフェンスしてくれる?」
何人かがやってくる。
「どうせなら形を作ってやろう、オフェンス三人ディフェンス五人になって。」
俺の指示で人が分かれる。
「まず、高めのクロスをあげるから。あっ、ついでだしオフェンスはみんなゴール狙う気で動いて、ディフェンスもゴールを阻止するつもりで真剣にやろうか。なんなら俺にマークに来てもいいよ。」
そういった後、俺はパスを受けクロスをあげる。
パスを出す際に動きを見ていたが、シンジより奥にいた子の方が動きが良かった、俺は後ろの子にクロスを出した。
その子は叩きつけるヘディングでゴールを決める。
「君のセンスは素晴らしい!いい所が見えてるよ、名前は?」
「タツヒコです!」
「タツヒコくん、君はもっとヘッドの練習をしたらいい、位置取りの才能はあると思う、後は如何にゴールを決めるかだよ、さっきは叩きつけてたけど、もっとコースを意識して、難しいコースを狙えるようになったら君は世界でも通用すると思うよ。」
俺に絶賛されタツヒコは感動している。
「あの、僕は・・・」
タツヒコを褒める裏で本来見てもらう予定だったシンジが聞いてきた。
「シンジくんはクロスに合わせるのはまだまだだね、次は裏に抜ける動きをしてもらおうか、みんなも本気の動きを見して、なるべくみんなの動きを見てパスを出すから。」
今度は俺がペナルティエリア手前に立ちディフェンスが俺にパスを出したら裏に抜ける動きをしてもらう。もちろんディフェンスはオフサイドにかける動きもする。
微妙な駆け引きの中、シンジがいい動きを見せる、俺は縦に速いボールを出し、シンジに合わせる。
シンジは縦に来た速いボールをワンタッチでゴール上すみにコースを変えて決める。
「シンジ、今のはいい動きだよ。君は裏に抜ける才能がある、ただこの才能はパスの出し手による所が大きいから、もしチームを選ぶ機会があればその辺を考慮した方がいいかな?あと瞬発力が命だから筋肉の付け方も考えた方がいいと思うよ。」
「はい!ありがとうございます。」
俺はその後も指導を続けて2時間・・・
「この辺かな、はい終了~」
俺は練習を打ち切る。
「リョウさん、俺達はまだやれます!」
「いやいや、これ以上は身体に悪いからね。」
「でも、こんな機会なんてないし。」
「まあ、気持ちはわからないでもないかな?そうだ、ちょっと待ってて。」
俺はリナに電話をする。
「お兄ちゃん何?」
「俺の荷物からお灸を持ってきてもらえる?」
「うん、わかった。すぐにいく。」
「ちょっとリナ、場所伝えてないよね。」
「グランドでしょ?わかってるよ。」
「なんで!なんで知ってるの!」
「すぐに行くから~」
「ねぇ、リナ、リナ!」
電話が切れた。
「リョウさんどうしたんですか?」
「いや、妹にお灸を持ってきてもらってる。」
「お灸?」
「えーと、これは素人の俺がやってる事だから強制はしないし、お灸で火を使うから必ず保護者の元でやると約束出来る人にだけ行います。」
「お灸に効果があるんですか?」
「案外バカにならないよ、あっ、もちろんお金をとったりしないからね、怪しげな訪問販売では無いと約束します。」
「それは心配もしてませんよ!」
「あと、君たちは成長期だから俺が指摘する場所でお灸の効果があるのは1ヶ月ぐらいだと思う、もちろんその後続けてもいいけど、効果はわからないよ。」
「背が伸びなかったら同じ場所でいいんですか?」
「うーん、そうとも限らないんだ。気の流れとか筋肉の具合とかいろんな要素があるから、まあ、俺が渡すお灸もそんなに数が無いし、1ヶ月を目処にしてくれたら。」
「そんなに違うのですか?」
「こればかりは体験しないとわからないけど1日でわかるかは微妙だから、あくまで俺を信じてやり続ける人だけかな? 強制はしないし、やらない人が多いとやる人のお灸のストックが増えます。」
そういうと、どうする?とかお前の分くれよとか色々話し合っていた。
「お兄ちゃん、持ってきたよ♪」
「おーリナありがとう。」
俺はリナの頭を撫でる、
リナは目を細めて嬉しそうに笑顔を見せた。
「あ、あのその人は?」
「俺の妹のリナ。お灸を持ってきてもらったんだ。」
「リナです、お兄ちゃんがお世話になってます。」
美しい少女に少年のほとんどが見惚れていた。
「お灸してもいい人はこっちに集まって。」
俺が声をかけると全員集まった。
「さて、じゃあ、お灸の場所を教えるから誰かマジックない?」
「あっ、俺、持ってます!」
シンジがマジックを渡してくる。
「じゃあ、シンジからいこうか。」
「はい!」
俺はシンジの足と腰にマジックで点をつける。
「この位置に毎日お灸を十分する事。」
「はい!」
「じゃあ、次はタツヒコにしようか。」
タツヒコがやってくる。
「タツヒコは此処だな。」
俺は背中と足、首スジに点をつけた。
その後、一人一人に点をつけていく。
「リョウさん、みんな位置が違うのはなんでですか?」
「個人個人で伸ばすべき場所が違うからね、そうだ、あとヒカルくん、君は足が壊れかけてるから1度大きな病院にいった方がいいよ。」
「えっ?」
「今すぐという訳じゃないけど、だいぶ無理が溜まってた。もし、病院でも判別出来なかったら必ず俺を訪ねてきて、やっちゃ駄目だけど医療行為をしますので。これ俺の住所と電話番号。」
「わかりました。」
「いいかい、今、治さないとサッカー出来なくなるからね、必ず治すこと!」
「はい!」
「じゃあ、俺は帰るから。みんなも帰りなよ、くれぐれもこの後サッカーしないようにみんなもダイブ疲労してるからね、特にヒカルくん!」
「わ、わかりました!」
そして、俺は帰宅する。
指導者もなかなか楽しいなと思いながら・・・
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