第348話 サッカー少年
俺はリクの質問に答える。
「うん?何かな?」
「リョウさんって、サッカードイツ代表で試合に出てませんでした?」
「そんな頃もあったかな・・・」
「リョウくん、最近だからね、遠い昔みたいに言わない!」
ミウに突っ込みをされる。
「やっぱり!あのサインもらえませんか!」
「俺のサイン?」
「はい、お願いします。」
「いいよ。何処に書いたらいい?」
「え、えーと、背中にお願いします。」
リクはTシャツの背中に書いてもらう。
「あのイングランド戦のプレー感動しました。」
「あの試合見てたんだ。何か恥ずかしいな。」
俺はリクくんにサインをしながら話す。
「恥ずかしい事なんてないですよ!凄いプレーでした。」
「そうかな、ありがとう。」
「でも、なんでドイツなんですか?日本人ですよね?」
「・・・うーん、気がついたらドイツ代表だったんだよなぁ。」
リクと話しているとミウが会話に入ってくる。
「リョウくん、試合見に行った筈なのに試合に出ててビックリしたんだからね。」
「俺もビックリした、ユニフォーム着て浮かれてたら試合に出てたし。ピッチに出てから俺が日本人って気付いたよ。」
「えっ!そんなに急に出たんですか?普通合宿とか事前練習に呼ばれるんじゃ」
「親善試合だったから、監督の気まぐれだったと思うよ。」
「へぇー」
リクはドイツ代表の裏話を楽しそうに聞いている。
「そういえば、リクくんもサッカーしてるの?」
「はい!FWをしてます。」
「そうかい、そうだ、一緒にボール蹴ってみるかい?」
「いいんですか!」
「いいよ、今日は暇だし。どこか広い所に行こうか。」
「なら、グランドに行きましょう!」
俺はリクと近くのグランドに行く。
其処には中学生ぐらいの子達がサッカーをしていた。
「あー使ってるね。どうする?俺は其処らの河川敷でもいいんだが。」
「いえいえ、ケガをされたら行けませんし、グランドを少し借りましょう。話せばわかってくれますよ。」
「そうかな?」
リクはサッカーをしている中学生に話しかけていた。
話が終わったのかリクに呼ばれる。
「リクくん話は終わった?」
「はい、少し借りれました。ボールを蹴りましょう。」
「よし、蹴るか。」
俺はリクとボールを軽く蹴る。
暫く蹴ると、リクの動きがだいたい把握出来たので・・・
「リクくん、クロスあげるからゴールを狙ってみな。」
「いいんですか!」
「おう、好きに飛び込んでみて、足元に入れてあげる。」
俺は走り出したリクの足元にピッタリ合わしたボールを蹴る。
そのままリクは蹴り込みゴールにボールが突き刺さる。
「な、な、な、なんですか、今のボールは!」
リクは興奮していた。
ただ走り込んだだけなのに足元にピッタリとボールが来て、何も考えずにゴールが決まる。
「上手く蹴れたね、あとはそれを自分の狙った場所に蹴れるようになったら上手くなるよ。ループさしたり、ニアやファーに蹴り分けたりね。」
「はい!」
「じゃあ、もう一本蹴ろうか?」
「いいんですか?」
「せっかくだし、次は腰の高さに出すからボレーで行こうか。」
「はい!お願いします。」
リクは走り込みボレーに入ろうとするが少しコースを意識しすぎ、足が出るのが遅くなった。その為、ボールはリクを過ぎ去る。
「リクくん、考えすぎ。もっと無心でいかないと。」
「でも、それじゃコースを変えれない・・・」
「うーん、手前に出してあげてもいいけど、練習だからね、無心でコースを変えれるようになってみようか?」
「はい!」
それから暫く蹴り込む、無心で蹴ると合うし、ゴールは決まるが少し考えると遅れてしまう。
そのジレンマにリクは悩む。
50本ほどやった時、ボールを蹴る瞬間閃く、その感覚に従いボールをループさせるとゴールに入る事はなかったが狙い通りコースを変える事が出来た。
「リク、その感覚だよ。その閃きを大事に、さあ、覚えているうちにもう1本いくよ。」
それから何本か蹴り込むとリクは感覚を掴んだのかコースを上手く変え始める。
「うん、いい感じだね。」
リクが上手く蹴れるようになった頃、横で見ていた中学生が寄ってくる。
「あの~リョウさんって本当ですか?」
「うん、本当かどうかは知らないけど俺はリョウだよ。」
「あ、あの俺達にも教えてもらえませんか!」
「うん、いいよ。でも、数も多いみたいだし、しっかりと教えれるかな?」
「かまいません!多少でもいいんで教えてください!」
俺は流れで中学生に教えることになった。
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