第304話 両親の同意

ヒロキとレーアがキスをした翌日。

「アベルさん、話がある。ちょっといいかな?」

俺はアベルを呼び出す。

「リョウどうしたんだい?」

「なに、たいした事じゃないんだけど。レーアさんとヒロキが付き合うことになったから。」

「・・・いやいや、たいしたことあるよ。妹とヒロキが?ホントにか?」

「ホントだよ。それでアベルさんは賛成?反対?」

「うーん、気持ち的には賛成なんだが、うちの家的には反対せざるおえないかな。」

パン!

アベルの頬をかすめるように銃弾が通過する。

「聞こえなかったな、もう1度いいかい?」

「さ、賛成に決まってるだろ!やだなぁ、命の恩人に反対するわけないじゃないか。」

「いい答えだ、それで、アベルの両親は今どこにいるのかなぁ?」

「・・・私の両親?まさか、止めろ親は関係ないだろ?」

「何を言ってる?ヒロキとレーアさんの関係を認めて貰うんだ、両親の同意も必要だろ?」

「や、止めてくれ。両親の命だけは!」

「やだなぁ、誰も殺したりしないよ。ちょっとお話するだけさ。」

「やめろーーー!」

アベルの叫びも虚しく、俺はアベルの両親との面会に成功する。


「どうです。二人の仲を認めて貰えないでしょうか?」

「いいよ。」

「えっ、父上。いいんですか!日本人のどことも知れない男ですよ。」

「レーアが選んだんだ、悪い男じゃないよ。それに、リョウくん、君はドイツで有名だからね。君の親友というだけで身元は充分だよ。」

「ありがとうございます。」

「欲を言えば、リョウくん自体を狙ってほしかったがこればかりは巡り合わせかな。」

レーアの父親は笑いながら承諾してくれた。

「しかし、俺が有名って?」

「ドイツ代表でサッカーの救世主、新薬の輸出にたいして発言力を持つ人物、最近だとクラシック音楽にも影響を持つよね。」

「・・・誰それ?」

「君だよ。」

「うっ、確かにいろいろやってきたけどー」

「ところでうちの娘を君の親友に差し出すのだが、私としては何かメリットが欲しいところだね。」

「メリットといいますと?」

「そうだね、娘の結婚式に新しいピアノソナタを作ってくれるとかはどうだい?」

「・・・それなら、先払いしましょう。」

「なに?」

「ピアノありますか?あと録音して後で楽譜にしてくださいね。」

「まさか、もう出来てるのかい。」

「さあ、それは聞いてのお楽しみで。」

「ま、待ってくれ、すぐに用意する!」

レーアの父親は慌てて、録音準備とレーアの母親、祖父母を連れてきた。

「では、始めますよ。」

・・・

俺はヒロキとレーアを思い、最初情熱的に、その後それを包み込むような優しい曲調を作り上げる。


そして、弾き終わったあと・・・

「どうでしょう?」

「・・・ありがとう、娘の為にこんなにいい曲を・・・」

父親は涙で声が出てなかった。

「レーアさんとヒロキの為です。おじいさんやおばあさんもいますが宜しいですか?」

「文句はない、それよりいつこれを披露していいんだ?」

「それはヒロキとレーアさんの結婚式じゃないですか?」

「それまで、埋もれさすのか!」

「その為の曲ですから、それにもし結婚が流れたら公表するのは止めていただきますし。」

「なんだと!お主は音楽の大切さがわからんのか!」

「これは親友と妹の友達の結婚を祝福するための曲です。それが無くなればこの曲に意味なんて有りません!」

「ぐぬぬ・・・おい、カイン!すぐに結婚式の準備をしなさい。」

「お父さん待ってください、いくらなんでもレーアはまだ12歳ですよ!」

「かまわん!昔はよくあった話だ、籍をいれるのは後でいいだろ。」

「わかりました。向こうの御家族に連絡して至急話を進めていきます。」

「うむ、リョウくん、君は音楽一本でいかないのかね?これだけの曲を作れるんだ、君が良ければ私が後見人になってヨーロッパで売り出す事も出来るぞ。」

「いえ、音楽はそこまで頑張ってないです、趣味の延長かなぁ~それに日本で俺を売り出したいって人もいますし。」

「もったいないなぁ、気が変わったらいつでも連絡してくれ。なにせ当家は君の親友の家になるんだからな。」

「はい、そうですね。機会があれば連絡しますよ。」

こうして、俺はヒロキの結婚の道筋を作った。


「ということなんだ、ヒロキ褒めてくれ。」

「てめぇ、やること早くて何よりだよ!」

「妹の友達を泣かせたらただじゃ済まないぞ。」

「泣かせる気はないが・・・レーアさんの気持ちとかあるだろ。」

「貴族の家だからね、当主を先に押さえないと何してくるかわからないから。俺達もいつまでもドイツにいないし、あっ、お前はドイツ在住かも知れないけどね。」

「お前はいじりたいだけなのか、真面目なのかわかりずらいな!」

「幸せを願ってるだけだよ。ヒロリ♪」

「・・・OK、いじりたいだけなんだな!」

「12歳と結婚式あげるなんて♪どんだけなんだよ♪」

「お前が準備してるんだろ!」

「いやなのか?」

「・・・」

「ほら、あーそうなるとしばらくヨーロッパか?何度も来るのめんどくさいし。」

「さっさと日本に帰れ!飛行機に積めてやる!」

「やだよ、しばらくヨーロッパ観光でもしてるよ~♪どうせ、すぐに結婚式だろ?」

「まだ何も決まってないよ!」

「二人とも楽しいところ悪いな。」

「「ダイキ?」」

「親父から連絡が入った。」

「なに?」

「リョウ、帰国だ。喜べ。」

「はい?俺はもう少しヨーロッパを観光してヒロキの結婚式見てから、船で帰るよ。」

「無理だな、今すぐ帰国だ。」

「やだ、その流れは飛行機に乗せる気だろ!」

「残念もう決定なんだ・・・」

俺は何者かに後ろから殴られ、気を失ったまま、日本に送られた。

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