第205話 キサク来訪

カラオケから帰ったあと、みんなに聴かせ、その後修正が完了したのでキサクさんに連絡してみる。

「もしもし、御無沙汰してます。リョウです。」

「おー世間を騒がしてるリョウくんか、あまり無理してケガしないようにな。」

「はい、気を付けます。それで今日電話したのはピアノソナタが出来たのでお渡ししようかと思ったのですが・・・」

「なにーーー!」

「うわっ!うるさ!」

「ピアノソナタを作ったのかね?」

「はい、でも、あまり自分で演奏する気はないので楽譜を差し上げますよ。」

「わ、わかった、私の手で世界に売りだそう、ありがとうリョウくん。」

「お礼を言われる事でもないですけど、まあ、聴いてみてください。」

「すぐに楽譜を取りにいくから、何処にいるんだい!」

「もう夜も遅いですし、明日郵送で送りますよ。」

「君は何をいってるんだ!何か合ったらどうするんだ!私が取りに行くから何処にいるか教えてくれ。」

「じゃあ、源家の東京の屋敷に世話になってます。」

「なるぼど、明日の朝取りに行くからまっててくれ!」

「わかりました~」

そして、電話を切る。


「アズちゃん、明日の朝お客さんが来るって。」

「わかりました。」

「さて、曲も出来たし寝てくるよ~」

「リョウくんお疲れ様、ユックリ休んでくださいね。」


朝七時

「おはよ~」

「リョウくん、おはようございます。お客様がお目見えですよ。」

「えっ?もう来てるの?」

「朝五時に家の前に入らしてましたので入ってもらいました。」

「はい?早すぎない?」

「私もそう思いますが、いてもたってもいられなかったとか・・・」

「起こしてくれたらよかったのに。」

「朝早くに来たのは私の勝手だから絶対に起こさないでくれ、って言われまして・・・」

「まあ、いっか、ちょっと会ってくるよ。」

俺はキサクさんに会いに行く。

「おはようございます、キサク早すぎますよ。」

「どうしても待ちきれなくてね。どんな曲なんだい?」

「じゃあ、ちょっと演奏しますね。」

俺は部屋に置かれたピアノを使い演奏する。

1楽章弾いたところで止めたが音もたてず号泣するキサクさんがいた!

「こわっ!どうしたんですか?」

「リョウくん!こんな名曲を作ってどうしたもこうしたもないよ、私の全てを賭けてでも世界に売り出すから安心してほしい。」

「別に世界に売り出さなくても、1楽章は弾きやすく作ってるから練習用にどうぞ~って感じでいいですよ。」

「何を言ってるんだい、以前から思うが君は自分の評価が低すぎるよ。君は世界に代えのきかない存在なんだから絶対ケガをしたり、ましてや死んだりしてはいけないんだからね。」

「死んだり、ケガしたりする気はないんだけどなぁ~」

「僕としては荒事はやめて音楽家として生涯を過ごしてほしいところなんだが・・・」

「うーん、でも、曲が出来るときっていきなり来るんだよね。今回は書くもの合ったから書き留めたけど・・・」

「ま、まさかと思うが書き留めて無いものも・・・」

「あるよ~個人的にはそっちの方が好きだったんだけど、しばらくすると細かくは忘れるんだよね♪」

「・・・わかるところでいいから弾いてもらえるかい?」

「いいよ?」

俺はリチャードとの船での戦闘を思い出しながら弾いてみた。

「うーん、やっぱり微妙。抜け落ちが多いや・・・」

振り返るとそこには・・・

「リョウくん!なんで書き留めなかったんだい!こんな名曲を後世に残さずに失わせる気かい!」

「い、いや、思い出せないし、いっかなぁ~って。」

「おーこんな名曲が無くなるなんて・・・」

「ははは・・・」

「笑い事じゃないんだよ!いいかい、音楽は天から与えられたギフトなんだ、それを無駄にするのは人類の宝を捨てるような物なんだよ!君はその辺の自覚が足りなすぎる!」

「うーん、出てくる時は出てくるし、あんまり気にしてないかな?」

「リョウくん、君に秘書はいるかい?」

「秘書?いないよ、というかいる人少ないよね。」

「君には絶対音感のある秘書が必要だと思う、そして、君が思い付いた時に口ずさんでくれたらそれを楽譜に起こす、君の手間ははぶけるし、良くないかい?」

「うーん、あまり知らない人を側に置きたくないから嫌です。」

「しかしだね、あまりに勿体ない。」

「まあまあ、近くに書くものがある時は今回みたいに書き留めて置きますから。」

「・・・まさかと思うが、普段書くものは?」

「持ってないよ?今回はイトコに手帳借りて書いた。あっ、新しい手帳買いに行かなきゃ。」

「リョウくん!さては君は書き留める気はあまりないな!」

「ぶっちゃけ、思い付いた時だけかな~」

「はぁ、リョウくん君には自分が手に入らない宝を目の前で捨てられる者の気持ちがわかるかい?」

「キサクさん、目が怖いです。」

俺はキサクさんに肩を掴まれ。

「いいかい、君が捨ててる物の1つだけでも僕達音楽家が人生賭けて求めているものなんだい、頼むから捨てないでくれ。」

「ま、前向きに善処する予定を検討します・・・」

「なんだって?」

キサクさんの頭に青筋が見えた。

「わ、わかりました。手帳を持つことを約束します。」

「そうかい、わかってくれたらいいんだよ。」

「あー怖かった。」


その後、キサクさんに未完成の曲も楽譜に書かされ、それを持って帰っていった。

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