第178話 襲撃

「エミリー、機嫌を直しておくれ。」

「リチャードおじさんなんか嫌い!」

「エミリー!」

エミリーは部屋にこもった。

せっかくリョウに会えたのにそれを邪魔したリチャードが許せなかった。


「・・・レオン、エミリーに嫌われてしまった。」

「まあまあ、エミリーはリョウの事が好きだからね。」

「・・・俺の剣に反応出来ないような奴はエミリーにふさわしくない!そう思わないか!」

「リチャード・・・お前の剣に反応出来る奴なんてほとんどいないだろ?」

「それでもだよ!」

「落ち着け、それよりはリョウくんの信頼を回復しなければ話にならない。食事にも来ないとなると船内では厳しいか、後日改めてになるのかな。」

レオンはため息がもれる。

「まどろっこしいことをしなくても連れてきて話せばいいじゃないか?お前が借りた船に乗せてやってるのだろ。」

「それをしたら二度と信頼されないだろう。それに船の話はこちらから持ちかけたんだ、それなのに襲われるなんて・・・」

「剣士を名乗っているんだ、剣に倒れるのは覚悟のうえだろ。」

「はぁ、リチャード護衛対象を間違えるな。彼は私の客人だ。今回お前を呼んだのは失敗だったかも知れない。悪いが自室でおとなしくしていてくれ。」

「レオン!」

しかし、レオンはもう話す気が無いのか書類の処理を始めた。


リチャードのプライドは傷ついていた。

仕えるべき主レオンからの失望、娘のように可愛がっていたエミリーからの無視、これまで受けたことのない絶望を味わっていた。

そして、リチャードは暴走する。


その日の夜。

「カエデ起きろ、奴が動いた。」

「リョウさま、敵はどこですか?まだ結界に反応はありませんが。」

「部屋を出てこっちに向かっているところだ、レオンさんは逆側の部屋だからこっちにくる可能性がある。」

「一体どうやって?」

「俺にも隠し手の1つぐらいはあるよ。それよりみんなを起こして、逃げる準備をするよ。」

「はい。」


全員を起こして脱出口近くに集まる。

「ミウとアズちゃんはアントくんに乗って、ミズホはラルフの上に、あとは掴まっていたらアントくんとラルフが海に連れていってくれるから、俺とカエデは一応話を聞きに行く。」

「リョウくん危ないよ!」

「大丈夫、備えはしてるし、誤解だと後の厄介が待ってるからね。」

「皆さん、私が必ずお守りいたしますので。」

「時間がないから行こう、遠い間合いのうちに話を終えておきたい」

「はい。」


俺とカエデはリチャードに会いに行く。

「リチャードさん、こちらに来られては困りますね、近付かない約束では?」

「ははは、話ぐらいはいいだろう?君たちは部屋から出てこないしね。」

「話し合いに腰の剣が必要なのですか?」

「剣士に会いに行くんだ、当然の備えだろ?」

「そうですか?話し合いにだけなら必要ないでしょ?」

「考え方の相違だね。」

「それで何のようですか?」

「エミリーが怒って話してくれないんだ、怒るのをやめて出てきてくれないか?」

「お断りします、あなた程の腕の相手の間合いにいるのは恐ろしいですので。」

「そうかい、それなら腕づくでも、連れて行かしてもらうよ。」

「やはり、そうなりますか?お断りです!」

「断れると?」

「カエデ!」

カエデは煙幕を張る!

「この程度で!ウッ!なんだこの痛みは!グッ!」

リチャードは身体の何ヵ所かに焼けるような痛みを感じる。

「ヒアリですよ、ちゃんと防虫はしとかないと倉庫に巣がありましたよ。じゃあ俺達は逃げますのでレオンさんによろしく。」

「ま、まて!」

ヒアリの毒ですぐに動けないリチャードをおいて、俺は逃走に入る。


「リョウさま、始末なさらないでよかったのですか?」

「レオンさんと必要以上にやりあう事もないよ、それより船から脱出だ。」

「はい。」

「リョウくん!」

「みんな海に逃げるよ、既にクジラが待ってるから安心して。」

「クジラが待ってる意味がわからないんですけどね。」

「アントくん、ラルフ走り出せ!」

アントとラルフは海にダイブした。

「きゃーあ!」

「カエデ、俺達も脱出しよう」

「はい!」

俺達も夜の海にダイブした。

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