第132話 サエ
「サエちゃんごめんね、なんかうちの争いに巻き込んじゃって。ばあちゃんの事は気にしなくていいから、いい相手を探しなよ。」
「リョウさま?何をおっしゃっているのですか?私の相手はリョウさま、しか考えられません。」
「ん?いいんだよ、子供の頃の約束に縛られなくても。」
「いいえ、子供の時から想いは変わっておりません。リョウさま、あらためてまして。お嫁にもらってくださいませ。」
サエは三つ指をたてて、頭を下げる。
「えっ、いや、う、ぐっ!」
俺の口がカエデに塞がれる。
「リョウさま、適当に返事をなさるのはおよしください、言質を取られるところでした。」
「ありがと、カエデ、思わず返事をするところだったよ。」
「あれ?おかしいですね、タイミングは完璧だったのに。」
「サエちゃん、奇襲はダメだよ、こんなので言質を取っても何も始まらないよ。」
「ふふ、冗談ですけど、でも意識はしてくれましたよね。」
「い、いや、まあ、ちょっとドキッとしたけど。」
「なら、成功です♪」
「はい、離れてください。リョウくん油断はダメだよ。ここは敵地、油断が死を招くの。」
「アズちゃん、言い過ぎだよ。一応ばあちゃんが住んでる所で、昔の馴染みがいるだけだよ。」
「その油断がさっきの返事になるんです。言質を取られたらお婆様が何をなされるか・・・」
「うーん、そうかな?サエちゃんもいい子だから話せばわかってくれると思うけど。」
「リョウくん!既にほだされてるよ。リョウくんは敵以外に甘すぎるよ。」
「実際、敵じゃないしなぁ。敵なら斬れば終わるけど、敵じゃないなら斬れないし。」
「リョウくん、その考え方も危険だよ。お爺様になっちゃうよ。」
「はっ!危ないところだった。」
「リョウ、ワシのようになりたくないのか!」
「うん、じいちゃんみたいに殺伐とした人生はやだ。」
「もう。遅いと思うがな・・・」
「そんなことはないよ、ねぇ?」
俺はミウ、アズちゃんを見たが目をそらされた。
「あれ?おかしいなぁ、大丈夫だよね、カエデ?」
「大丈夫ですよ、いかなる状況でも私が御守り致しますから。」
「それ大丈夫じゃないよね?殺伐とした生活はやだよ。」
「リョウさま、土御門の家に来ていただければ殺伐とした世界から離れられますよ。」
「そこ!誘惑しない!」
アズちゃんがサエに噛みつく。
「サエさん、リョウくんは既に源家の重鎮なの、しいて言うなら武家の人間なの、土御門の公家の家とは違うのよ。」
「リョウさまがおっしゃられたように、リョウさまは武に生きるのはお嫌なのですよ。土御門で文の道を歩まれる方がいいと思うのですが。」
「何を言うの、私と音楽の道を行くの!デビューも決まっているのだからね。」
ミウ、アズサ、サエは三人で争っていた。
「カエデは参戦しないの?」
「私はどの道を歩まれても横にいますから。」
「まあ、頼りにさしてもらうよ。」
「お任せください。」
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