第81話 撮影
翌朝、俺とアズサは撮影現場にいた。
昨日家に乗り込んできた男は急遽役をおりたらしく、代わりにタツという若手俳優が代役に選ばれた。
「おはようございます。あなたが島津豊久役の桐谷リョウさんですか?」
「そうだけど、君は?」
「えー昨日はイサムさんがご迷惑をお掛けしました。イサムさんの後輩のタツと申します。イサムさんの代役で島左近役になりました。あまり接点のない役いなりますが以後お見知りおきを」
「これはご丁寧に、こちらこそよろしくお願いします。」
俺はタツと握手をかわす。
「ところでタツさんは俺に思うところはないのかな?」
「無いと言えば嘘になりますが話を聞くところイサムさんが一方的に悪いので何も言えないところですね。それに逆らったら後が怖そうですから・・・」
「君は正直だね、俺もアズサに危害を加えないなら何もする気はないよ。できたら仲良くはしたいかな?」
「ええ、仲良くしていただけたら嬉しいですね。自分は今回のチャンスを生かしてビッグになるっす!」
「逞しいね、まあよろしく。」
現場に入ると監督から役の説明を受けるが歴史に従う感じで指示があったら本気で暴れて欲しいとの事だった。どうやら、源グループの方から大分圧力があったのだろう、監督は終始俺に敬語で話していた。
退き口までは特に台詞もなく、義弘の横で控える若武者なだけだった。
しかし、退き口が始まる・・・
「この戦は負けじゃの、ここは潔く切腹するか。」
「叔父上なりませぬ!叔父上の存在は島津の存続にかかわります。ここで我が戦死しようとも叔父上は生きて薩摩に戻らねばなりませぬ!」
「しかしの、そなたを戦死させどの顔して兄に会えばよい、冥府で家久に会わせる顔もないわ!」
「すべてはお家の為にございまする、冥府の父も喜びこそすれ叔父上を責める事は有りませぬ」
「わかった!これより、退却を開始する。だが退路は後ろには無い、前方の家康に打ち掛かり、伊勢に抜けるぞ!いいか島津の武勇、家康見せつけてやろうぞ!」
「ハッ!」
「叔父上、先陣はこの豊久にお任せあれ。」
「うむ、任せたぞ。者共出陣じゃーー!」
俺を先頭に島津軍は家康軍に突撃する。
「我こそは島津豊久なり、我と思う者は掛かってこい」
俺は馬上で槍を振るい先頭を走る。
そして、伊勢街道に抜けると、
「叔父上、急ぎ退却を、殿は某が引き受けます。」
「豊久・・・すまぬ。」
「義弘は伊勢街道を抜けて行った。」
「いいか、これより捨て奸にて向かえ討つ、命を惜しむな!名を惜しめ!」
馬を捨て、暫く戦うが兵の数が減ったところで井伊直正が出てきて、一騎討ちを行う。
「雑兵に討たれるのはしのびない、お相手いたそう。」
「忝ない、我は島津豊久いざ参る!」
「井伊直正、掛かって参られよ!」
激しい立回りを行い。井伊直正に手傷を負わせたシーンを作ってから、
島津豊久は討ち死にした・・・
「あー楽しかった♪」
俺は撮影が終わり大満足だった。
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