第65話 出勤再び

翌日、出勤したら石戸係長の姿は見当たらなかった。

「リョウくん、復帰おめでとう、」

アミさんが祝ってくれた。

「ありがとう。」

「いや~昨日は荷物まとめて帰ってたからどうしたのかと思ったよ。」

「見てたの?石戸係長にクビって言われたから帰ったんだけどね。」

「うわぁ、バカだねぇ。リョウくんが社長関係者って認識してなかったのかな?」

「それでどうなったか知ってる?」

「平に降格の上、どっかに地方の子会社に飛ばされたと聞いたよ。」

「へえ~」

「リョウくんに逆らうからだよね。」

アミさんはからかうように言ってきた。

「人聞き悪いな、俺は何もしてないよ。」

「またまた~まあ、次期社長に手を出したら行けないよね。」

「誰が次期社長だ!」

「あれ?自覚がないの?ミウ様の婿になるんでしょ?」

「まだ、決まった訳ではない。」

「ホントに何が不満なんだか、あんなに一途で可愛い女の子が待っているのに。」

「だから、ミウには幸せになって欲しいと思うけど、俺とは歳の差があるだろ?」

「気にしないでいいと思うよ~、そんな事を気にする前に小さい女の子を落とすのをやめなさい。」

「落としてないから・・・」


「桐谷ー!ちょっときてくれ!」

俺は安倍さんに呼ばれた。

「アミさん、ゴメン。行ってくる。」

「はいは~い。行ってらっしゃい。」


「安倍さん、なんでしょう?」

「ああ、桐谷。今度名古屋に出張なんだが源グループとの交渉なんだ、頼むよ一緒に来てくれ。」

「行くのはいいんですけど、なんで俺に頼むんですか?」

「桐谷なら何かあっても許されそうだから?」

「安倍さんー!」

「今回の交渉やばいんだよ。納期短いのに予算もない。」

「なんで、そんなことに?」

「俺のミスだ!」

「威張らないでください。」

「仕方ないだろ~納期計算ミスったんだよ。」

「なら、1人で責任をとってください。」

「今度、係長が変わるだろ、一発目の失敗は避けたいんだよ。せめて、誰も文句が出ない奴を連れていれば助かるかもと。」

「おいおい、まあ、源グループの東海支部に知り合いいるから頼んでみるよ。」

「桐谷、向こうに知り合いいるの?そりゃ助かるよ。」

「この前知り合いになったばかりだから、期待しすぎないでよ。」

「もちろん、ダメ元でいいから。」

「それで、いつ行くの?」

「今から・・・」

「はぁ?」

「必要なものは買ってやるから、そのまま行くぞ。」

「ちょっと、待った!」

「いや、待てない行くぞ!」

俺は安倍さんに捕まり、名古屋に向かった・・・

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