第11話 ペット作成
魔導の練習を始めてから3日経過した。
レミリアはアレイスターに借りた指輪を使わずに、
魔法を制御できるようになった。
魔力の扱いについては合格点だ。
今日は屍術を使いこなせるように練習する。
魔法の練習中に襲ってくる小さな魔物を不死者にすることにした。
最初はホーンラビットで試してみた。
(確か、起きて! って、ひたすら祈ってたなあ)
魔物を倒したら、ベオウルフの時のように蘇生を願いながら闇の魔力を送り込む。
死んでいたホーンラビットが動き出す。
傷まで完治してしまった。
「これが君の屍術か。文献に載っている概要と全く違うから、知らずに見せられたら
ゾンビやグールは腐敗したまま使役されながら、更に腐敗が進行してゆくのだ。見た目も臭いも酷い。
流石に匂ってはいないが、このホーンラビットは腐敗などとは無縁なようだった。
「蘇生術って生き返りですよね? そんなこと、本当にできるんですか?」
「不完全だけどね。魔力以外に捧げるものが大きすぎて効果に見合わない。僕が知っているのは自分の命を使う術だけだね。命を蘇らせるのに命を使うんだから意味がない」
ホーンラビットは動かずにこちらを見ている。
「これ、このまま放っとくわけにはいかないですよね?」
「野良アンデッドなんて、嫌な予感しかしないからね」
「あまり練習しない方が良さそうです」
ホーンラビットは近くを飛び跳ねて動き始めた。時折、気にするようにこちらを窺っている。
「今のベオウルフは、きっとあんな感じなんだろうね。あはは」
「それ全く笑えないんですけど」
「とりあえず連れて帰ろう。確か使い魔のようにストックできる魔術があったはずだ。ベオウルフをストックするわけにはいかないけど。あはは」
「本当に勘弁してください……」
その時、ダイブイーグルが降下してきた。
ホーンラビットを捕食するつもりだったが、爪が空を切った。
「あれ、あの子あんなに素早かったかな?」
「君の魔力で強化されているはずだよ。もう少し魔力を分けてあげて、倒すように指示してみるといい」
「わかりました。うさぎさん、おいでー」
ぴょんとホーンラビットが寄ってきた。触るともふもふしていて気持ち良い。角が邪魔だが。
レミリアは撫でながら魔力を送り込んでゆく。
「うさぎさん、あれ倒せる?」
レミリアが空を指差すと、ホーンラビットはダイブイーグルを目で追って、コクコクと頷いた。
ダイブイーグルが再び降下してきた。
ホーンラビットは身構えて、ダイブイーグルの動きに合わせて角を突き出す。
ダイブイーグルはホーンラビットの角に突き刺さって絶命した。
「うさぎさんやった! でもすごい光景だよこれ」
上に向いた角にダイブイーグルは刺さったまま、大人が手を広げたくらいの大きさの羽を広げていた。血みどろの状態で。
ホーンラビットはダイブイーグルを放り出した。
「せっかくだから水の魔力の練習をするかい? 水を出して洗ってあげよう。もうイメージだけだからできると思うよ」
「やってみます」
レミリアは手に集中して、水をイメージする。
手から水が溢れ始めた。
「操作できるかい?」
意識すると、水は空中で球状になった。
「うさぎさん、洗ってあげるね」
雨のようにホーンラビットに水を振りかけた。
血が洗われてきれいになると、最後は身体を振って水を飛ばした。
アレイスターはダイブイーグルを見ている。
「これも使役してくれないかい?飛行する魔物は使い道が多いんだ。使えそうな魔術もあったし」
言われるがまま魔力を流し込んだ。
傷まで癒えたダイブイーグルが立ち上がってこちらを見ている。
ホーンラビットも、もう敵とは思わないようだ。
レミリアは少し目眩がした。
「アレイスターさん、疲れました」
「そろそろ一旦帰ろうか」
「この子ご飯探してたみたいだけど、ご飯はどうするんでしょ」
「ベオウルフはご飯はちゃんと食べてたけれど、どうかな。ゾンビは人を食うんだけど、あれは栄養摂取ではなく満たされない飢餓感からくる無駄な行為なんだ」
「いちいちベオウルフさまを引き合いに出すのやめてほしいです……干し肉ありましたよね? ちょっとください」
レミリアが干し肉をダイブイーグルに与えてみると、美味しそうに食べた。
「食べた食べた。うさぎさんはニンジンとか食べるかな。可愛いしノーラにも見せたいな」
「アンデッドの議論ではなく、ペットに餌をあげたいだけなんだね。さあ、遅くなる前に帰ろうか」
「とりさんは空に待機、うさぎさんはついてきてね」
収納ができるまでは放し飼いすることになった。
うさぎさんには首輪をつけておく。
ペットが2匹増えた。
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