第11話 番外編その1

「私、ここを出ようと思うの」


広い戦車の中。晩飯を食ってるときリサがそう言った。

さっきまで忙しなく鳴っていた食器の音が止んだ。代わりに遠くの砲声が聞こえる。


「唐突ね」


メイはいつもの無表情でそう言った。予想の範囲内だったんだろう。


「あれ、言ってなかったっけ」


「子供の頃の話じゃない」


「どうせなら3人で出ないか?」


俺は冗談めかしく言った。


「あら意外、すっかり軍の飼い犬になったのかと思ったわ」


メイがフォークを向けてくる。顔はニヤついている。

いや、もしかしたら引き留めたいのかもしれない。


「なわけあるかバーカ」


「はぁ?」


「喧嘩しないの!ご飯がまずくなっちゃうでしょ」


「ま、今は俺が上司だしな」


「それにしては威厳がないわね」


パスタを頬張りながらメイが言った。


「それは俺が最年少だからだろ」


「どうせアンタは歳食っても変わらないわよ」


リサが食器を片付け始めた。


「ほんとに3人で出るのね?」


「俺はそれでもいいが、メイは?」


「いいわよ」


「じゃあ3人で出ましょう!」


そう言ってリサはシンクへ食器を持っていった。

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世界と旅人と赤色 大西 詩乃 @Onishi709

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