第10話 郵便配達

「……なんで海翔が?」


うみが持っている杖の先にあるランタンがカラカラと音を立てた。


「お前がいるってことはここ、死後の世界とか?」


「あ……ごめん私死んでないんだ」


うみが目をそらしながら言う。


「死んで……は?」


「いろいろ事情があってか……。というか、なんで水かぶってるの?右手血出てるし、なんでここいるの?」


うみは俺の右手を掴んで慣れた手つきでハンカチを巻いた。


「全くわかんねー、気付いたらたらあそこにいて水かぶってて、そんで」


自分がいた教会を指差した。殺害予告されていたことを思い出す。


「どしたの?」


「やばい、俺、命ねらわれてるかも」


「ん?どうゆうこと?」


「いや、ガチガチ!

その少年を殺してみよ

とか言われたし」


マスターと呼ばれた人の真似をした。


「でも追いかけられてはないね」


「外出たら来んくなった」


「魔法使われた?」


「おう、なんか飛んできたし、鉄の扉がベコベコになってた」


「人に危害を加える魔法は禁止されてるよ、あの建物はお偉い様しかいないんだけどなぁ」


マスターはお偉い様か。


「うみ、いろいろ聞きたいんだが」


「ごめん仕事終わったらね」


と、子供をあしらう母親のように微笑んだ。


「何の仕事だ?てか仕事してんの?」


「うん、郵便配達だよ」


寒いのを耐えながらうみが郵便物を配るのを見つめた。

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