第11話
突然現れたフェンリルに、一同は息を忘れて放心していた。
「おーい、大丈夫ですかー?」
緊張感のない声がやけに響いた。
「リリア、走るの早いよ。」
『あら?でも走らなかったら今頃この人間達は死んでるわよ?』
「なら仕方ないな。 それより、大丈夫ですか?」
蓮也の問いかけで意識を取り戻すレイン。
「あ、あぁ、助けてくれたん、だよな?」
「ええ、なにやら手こずってたみたいなので。」
「ありがとう、俺の名前はレインだ。こっちの大男はダイン。弓を持ってるのがメレアで、杖を持ってるのがニーナだ。」
「ご丁寧にどうも。俺の名前は蓮也です。 こっちが相棒のリリア。」
リリアの頭を撫でながら自己紹介をする蓮也。
「あ、あの、その狼って、フェンリルよね…?」
続いて意識を取り戻したメレアが、おずおずと、聞いてきた。
「そうですね、綺麗な毛並みでしょ?」
『もう、蓮也ったら…』
連夜の答えにポカーンとするレインとメレア。襲われる事もなさそうなので、警戒を解く。
「しかし、本当に危ないところだったんだ。 感謝してもしきれないくらい感謝している。 なにか出来ることがあるなら何でも言ってくれ!」
「あ、それなら服とかって、予備あります? 俺の分と、女物もあれば1つ譲って貰えると助かります。」
「ローブなら持ってるが、これで良いか?」
レインは持ち物の中から長い踝くるぶしまである黒いローブを取り出した。
「ええ、十分です。 」
「私のも、はい。」
そう言って同じ黒のローブを手渡してきたメレア。
「ありがとうございます、早速使わせてもらいますね。ちょっと待っててください。」
そう言って茂みの方へ着替えに行く蓮也と、それに着いていくリリア。
「久しぶりだな、袖に手を通すの。」
軽く腕を振ったりして着心地を確かめる蓮也。
「よし、動きやすくていいな、これ。 それじゃ、リリアも人化しよっか?」
『そうね、今度はちゃんと見てよね!』
笑いながら、人化の術で人型になるリリア。
「…」
「どうしたの、蓮也?」
「あ、いや、やっぱり綺麗だなって…」
「あ、ありがとう…」
「こ、これ! 着方は俺の見てたから分かるよな?」
「ええ、ちょっと待っててね。」
服の擦れる音が聞こえる間、蓮也は空を眺めて気を紛らわしていた。
「はい、お待たせ!」
そこには蓮也と同じローブを着たリリアが居た。 腰の辺りに穴を空けて、そこから尻尾が出ていた。
(やっぱり、リリアって可愛いよなぁ。)
こちらを見ながら微笑むリリアを眺めながら、そう思った蓮也だった。
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