第9話






『むぅ〜』



不機嫌そうなリリアの唸り声が、洞窟の中でよく響いた。



「いや、ほんとごめん、見たくなかったとかそんなんじゃなくてだな。」


『良いわよ、どうせ大した術じゃないもの。蓮也はこの姿の方が好きだもんねぇ。』


「そうゆう訳じゃなくてな? あのままだと、色々危なかったんだよ。」


『危ないことなんて無いわよ。 そもそも、私に襲い掛かるモンスターなんて滅多に居ないわ。』


「…いや、その、なんてゆうか、俺の理性とゆうか、なんとゆうか。」


『理性…?…っ!///』



理解した途端、モジモジしながら急に挙動不審になるリリア。



『その、蓮也なら、別にその…』


「ん? 何か言ったか?」


『な、何でもないわ! 何だか眠くなってきたから先に寝るね!おやすみなさい!』


「お、おう、おやすみ。」



何はともあれ、リリアの機嫌が治ってほっとした蓮也であった。そして翌日、朝食を済ませた蓮也は草を採っていた。



「 リリア、この草でいいのかー?」


『ええ、これが薬草よ。 食べるだけで傷が治るの。』


「俺には必要なさそうだな。」



必要でもない薬草を採取する理由はただ1つ。人が生活するに必要なモノ、即ちお金である。 人里に着いた所で、お金がなければ服も買えないことに気付いた蓮也。



「いやぁ、大量だな、これは。」


『でもこれだけの量をどうやって運ぶの?』


「ふっ、リリアさんや、俺だって考え無しに採取してる訳じゃないのさ!」


『でも、これだけ量があると、運ぶのも面倒だし。』



集められた薬草の山を見ながら、リリアは困ったように呟く。


「まぁ見ててくれ。【アイテムボックス】!」



すると、蓮也の目の前で空間が歪みだす。



「この中にぽいぽいっと。」


『いつの間にこんな魔法覚えたの!?』


「いやぁ、この前の狩りの帰りにさ、アイテムボックスがあれば便利だなーって思ってたら出来てさ。」


『こんな魔法もあるのね、初めて見たわ!』


「しかも、この中に食べ物を入れておくと、劣化しないみたいなんだ。」


『へぇ、凄いわね。』


「とりあえず今ある薬草を入れたら、1度帰ってから出発しようか。」


『そうね、ついに旅立ちね。 この森から出た事無いから楽しみだわ。ふふっ』



そう言って薬草をアイテムボックスに入れ、帰路に着いたのであった。







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