【8】真実
涼side
61
―八月十九日―
希ちゃんから携帯電話に連絡があった。
『明日香君、明日から友達とキャンプに行くことになったんだ。高校最後の夏だからって、遥や友達が盛り上がって急に決まったみたいなの。
ママは『心配いらないよ』って、言ってくれたけど。何だか心配で……。この間から、少し様子が変でしょう。沈み込んでて、突然泣き出したり……。明日香君、私の留守中にママの様子を見に行って欲しいの? こんなことを頼めるのは、明日香君しかいないから……」
「いいけど、俺、希ちゃんのお母さんをドライブに誘っちゃうかも」
冗談半分に言うと、希ちゃんが笑いながら答えた。
「全然、大丈夫だよ。明日香君、もしよければママをドライブに連れて行ってくれる? ママは外出する機会があまりないし、気分転換になると思うから」
希ちゃんに背中を押され、俺は思い切って舞さんをドライブに誘うことにした。車の中でなら、翔吾のことを話せるかもしれないと思ったからだ。
――翌日、希ちゃんを東京駅まで送り届け、そのままバイトに行き、夕方舞さんに電話をかけた。
『はい。朝倉です。明日香君、こんにちは。希からさっき電話があってね。希の頼みだからって、無理しなくていいからね。こんな私とドライブしてもちっとも楽しくないでしょう。それに目が見えないから、足手纏いになるだけだし……』
舞さんは電話口で笑っている。
「足手纏いだなんて。行きましょうよ。きっと気分転換になりますよ。明日、バイトが終わったら自宅まで迎えに行きます。家の前で……クラクションを二回鳴らすから、それが合図です」
暫く沈黙が続いた。
断れられるのを覚悟で、翔吾との合図を口にしたが失敗だったかもしれないな。
「そうね……。明日香君と一度ゆっくり話をしてみたかったから。明日お願い出来ますか」
舞さんは、俺とのドライブをOKしてくれた。俺は明日こそ、舞さんときちんと話をしようと思った。
――翔吾……。
これでいいんだよな。
これで……。
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