22

 ―翌日―


 下校時間、正門前の歩道に希ちゃんと遥ちゃんが立っていた。

 車道には、赤いスポーツカーが停まっている。


 ――亀田だ……。


 亀田が車から降り、希ちゃんに話しかけている。希ちゃんと遥ちゃんが手を振り別れた。


 希ちゃんが亀田の車に乗り込んだ。

 幼なじみの二人、車の助手席に乗り込んでも不思議はない。

 俺はその横を、自転車で通り過ぎた。


 希ちゃんが俺の方をチラッと見て、瞬時に俯いた。亀田も俺に気付き、目で合図してニヤリと笑った。


 車が発進した後、思わず俺は立ち止まり車を見送る。

 遥ちゃんが俺に気付いて走り寄る。


「いーの? 明日香君、このままほっといて。希の気持ち分かってるよね?」


「えっ……?」


 希ちゃんの気持ちって、なに?


「ほんとに鈍いんだから。知らないよ、 亀田君と希は幼なじみだし、亀田君はすごくカッコイイし、ついフラッとなっちゃうかもよ」


「………フラッと?」


 俺は返す言葉がなかった。

 希ちゃんのことはとても気になる存在だけど、それが恋愛の『好き』かと聞かれると、感情がなかなか結びつかなくて。


 俺は立花翔吾と舞さんのことが気になって仕方なかったんだ。


「希の紙飛行機、亀田君が見つけてくれたみたいなの」


「紙飛行機……? 見つかったのか?」


 亀田はそんなこと一言も言わなかった。


「あの紙飛行機はね、実力テストの答案用紙なんだよ」


「……えっ!? だから、あんなに焦って探してたのか。どうして答案用紙で紙飛行機なんか……」


「希ね、クラスの女子に嫌がらせされてるんだ。高二までは仲のいい友達だったのに、突然、希に嫌がらせをするようになった。その理由も何となくわかってるんだけど……。亀田君と親しくすると、ますます嫌がらせされそうだよ」


「希ちゃんの嫌がらせと亀田が関係あるのか?」


「嫌がらせしている女子、光鈴女子高の生徒で亀田君のファンクラブの会長なんだ」


「ファンクラブ!? 亀田はそんなに人気があるのか?」


「明日香君、感心してる場合じゃないよ。希は亀田君のこと好きじゃないんだからね。幼なじみっていうだけで誤解されて、嫌がらせをされるなんて、割に合わないでしょう」


「……そうだね」


 大人しくて可愛い希ちゃんが、クラスの女子から嫌がらせをされているなんて……。


 友達として、許せない。

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