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でも、亀田とは不思議と気が合って、ライバル校なのに試合帰りに何人かでよくお好み焼きやたこ焼きを食べに行ったっけ。
木を掻き分け、紙飛行機を探していると背後から声を掛けられた。
「涼、久しぶりだな。同じ大学なのに学部が違うと逢わないもんだな」
腰を屈めたまま見上げると、そこには爽やかな笑みを浮かべた亀田が立っていた。噂の主は相変わらずイケている。
「亀田、久しぶりだな」
「ていうか、そんなとこで何してんの? 小学生みたいに虫取りでもしてるのか?」
亀田は笑いながら俺達を見下ろす。
完全に小馬鹿にしている。
「……いや別に」
思わず言葉を濁すと、すかさず田中が会話に割り込む。
「亀田君、光鈴女子高の朝倉さんと幼なじみなんだってね。俺達、免許取ったら初ドライブする約束したんだ」
「希と涼が初ドライブ?」
彼女を呼び捨てにするなんて、妙に癪に障る。
「まぁな……。まだ仮免だけど」
「仮免か。ククッ、いや失礼」
亀田は勝ち誇ったように笑った。
その余裕の笑み、もう免許を取得している顔だ。
「それ、俺も一緒に行くよ」
「お前も……!?」
「希は俺の妹みたいな存在だ。免許取り立ての涼に任せるのは不安だからな」
「何が不安だよ」
ていうか、まだ仮免なんだ。
そんなのいつになるかわからない。
◇
それから二十日後、田中は俺より先に免許を取得した。
希ちゃんとデートしたいがために、大学の講義をサボり自動車学校に通い詰め、補習ゼロで一発合格という快挙を成し遂げた。
しかも、遥ちゃんを味方につけるために、亀田も誘い五人で遊ぶ約束まで取り付けた。亀田はまだ新免マークの田中を敬遠してか、ドライブではなく行き先は都内のテーマパークに決まった。
亀田が車で希ちゃんと遥ちゃんを迎えに行き、俺達とテーマパークで待ち合わせをする。田中は俺を車で迎えに来てくれた。
「初運転の助手席が涼だなんてガッカリだよ。でも、サンキュー。亀田が来てくれたから、遥ちゃんもきっと上機嫌だよ。あとは、隙を見て希ちゃんと二人きりになる。おい、涼、協力しろよな」
田中はヘラヘラ笑いながら、俺の肩を叩く。
「俺は知らないよ」
亀田が同行するには、それなりの理由があるはずだ。
田中の作戦通りに、上手くことが運ぶとは思えない。
今日は久しぶりの晴天。田中の助手席は緊張と不安がハンパない。よくこれで俺より先に免許を取得できたものだと感心する。
道に迷い、急ブレーキにエンスト。
田中の初運転で事故なんて、頼むから勘弁して欲しい。
◇
結局、俺達は約束の時間を三十分以上も過ぎて、テーマパークに到着した。当然、亀田と希ちゃんと遥ちゃんはもう待ち合わせ場所に来ていた。
「遅い! こんなに待たせるなら事前に言ってよね。先に入って遊べばよかった。時間を損した気分」
遥ちゃんが超不機嫌で、田中に文句を連発する。
「ごめん、ごめん、めんご」
「ふん、くだらない」
「あれ? 亀田は?」
「亀田君はみんなのチケットを買うために並んでくれてるの」
なるほど、すでに点数稼ぎか。
十五分後、亀田がみんなのチケットを購入して戻ってきた。白いTシャツにブルージーンズ、腰にはチェックのシャツを巻きつけている。シンプルな服装なのにモデルみたいにカッコいい。
俺達だってTシャツにジーンズ。
それなのに俺達とはオーラが全然違う。
「ごめん、チケット遅くなって。やっぱり日曜日は混んでるね。涼と田中君のチケットも立て替えてるから」
「遅くなってごめん。お金払うよ」
ガサゴソとバッグを漁り財布を取り出しチケット代を支払う。俺達が誘ったのに主導権は完全に亀田が握っている。
超かっこ悪い。
「達哉君、ありがとう」
た、達哉君!?
幼なじみだもんな。
すでに、俺達は負けている。
「行こっか」
「はい」
遥ちゃんは亀田の言葉にポッと頬を染める。亀田と遥ちゃんも、なかなかお似合いだ。
亀田が俺にそっと耳打ちをした。
「一緒にテーマパークだなんて、夢みたいだな。これも涼のお陰だよ。凄く綺麗になってるから、驚いた」
亀田の視線の先にいたのは……。
遥ちゃんではなく、希ちゃんだった……。
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