第158話 - 謎の告白 -
-翌日、J&J国城内-
朝姫が城内の客間のソファーに腰を下ろし、ふてぶてしく頬杖をついていた。向かって初老の男が腰かけ佇む。相応の位の者だ。
朝姫は剣聖エイミの剣をモロに受け、ダウンした後、捕縛連行された。すぐに身分が明かされ、城内の客間へ招かれ、あっという間に要人滞在の待遇となっていた。ガラス張りの広い部屋からは城下が一望できる。
「本日こそお願いできませぬかな? この国の行く末の啓示を」
「剣聖は私をあんな目に合わせたため、バチが当たった。そう思わぬか?」
「おそれながら、神来社様から突っ込んだと聞き及んでおりますが……」
「貢物を寄こせ。そうじゃのー。先物で負けた-586万ナンと、異魂100人分じゃ」
「了解しました。金はすぐ用意いたします。異魂は3日ほどお待ちいただければ」
「やっぱり気が変わった。今のは無しじゃ」
――異魂100人分が3日で用意できるとはの。
「……なぜ啓示を欲する?」
「前例がないからです。どんな移民であっても、無理やり人口を維持すれば、国の衰退を免れるのか。増えれば資源が無くなる。減れば滅ぶ」
「くくっ 資源が無くなったことなどあったか? 食糧難はたびたび起こるがの」
「……」
「永遠に続く国などない。これまで一つとてない。あと何年持たせたいのじゃ? 100か? 1000か? 1万か? お前の政治家任期が終わるまでの間だけか?」
「それは……」
「保つ。維持する。最低の行為じゃ。神は認めぬ。そういう考えを持つ組織を振りかえるがよい。全て衰退しておる」
「何もしなければ鍛えた筋力は衰える。一度覚えたこともしばらくすると忘れる。なぜそう”創造されて”おるかよくよく考えよ」
「以上じゃ。風呂に入る。湯あみを用意させい」
・・・
-大使館前-
翌日、ガードが到着すると敷地に入る門の手前にユミと一人の男の姿があった。
――あれは、莉子とエルをナンパしていたイケメン風!? 今度はユミをナンパか、首と胴が離れないことを祈る。
「そこで急遽、親戚の穴を埋めることになった僕は、曹長に任命されたわけさ。そして先日のパレード、哲皇マリーヌ殿の先導役の任の末席に入ることができた」
「まあ、ご立派ですわ」
「マリーヌ殿は聡明で美しかった。でも今日この瞬間、君を見てそれすらも上書きされてしまったよ。その素敵なドレスに見合うお店を知ってるんだ。今度食事のデートでもいかがだろうか?」
「申し訳ありませんわ。私すでに婚約者がおりますの」
――え、どこに?
懐疑的な視線を送りつつ、スルーして横を通過し、ガードは先に会議室に入室する。まだオッドも居なかった。じきにユミも入室してくる。
「一瞬で首を刎ねるかと思ってそわそわしてたぜ」
「? そんなはずありませんわ。エンゲージは我が家の家訓。例えその気がなくても誠実に応じねばバチが当たります」
(イケメン風は部隊長から曹長に昇進した)
「……オッドは?」
「大地の教会へ礼拝に行っておりますわ。少し遅れるそうで」
「言ってはいたが、マジで礼拝の習慣があったのかよ」
・・・
オッドは地の神リーヴェンの教会へ入っていた。目の前へ位牌を3つ並べ、拳を胸に当て、祈る。
――――待たせたな。おめーら。もうちと待ってろ。
・・・
数十分ほどしてオッドが入室してきた。改めてシュルーサー一味に対する作戦の練り直しだ。
「その前に、一ついいか?」
オッドが先に切り出してきた。
「ガード、今から俺はこっ恥ずかしい話を一つ白状する。その代わり、大輔の討伐を全面的に俺に譲れ」
!
「……どういうことだ? 大輔のみでいいのか?」
「ああ。他はいい。受けるか?」
――大輔は一応タイマンで制している。討伐の目標でもあったが、今は断然麻里だ。
「いいだろう。その代わり麻里だけは譲らん」
「よし」
「お待ちになって。今のマリの部分をユミに変えて言ってくださらない?」
「は? ユミだけはゆずら――うゴホンゴホン。わけわからんことをさせるな」
「チッ」
一服置くため水を手に取る。
「いいか? じゃあ話す。俺はエル=スラルが好きだった」
「ぶほっ!」
ガードが吹きだす。
「ダーリン? そんなに頻繁に咳が出るならマスクをしていただけます?」
――ど、どいつもこいつも。
「いきなりのカミングアウトだな。どういうことだ?」
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