第152話 危機感
泣き喚くシュウジを言葉で抑えきれず、ただただ抱きかかえ、落ち着くのを待っているだけ。
シュウジは泣き疲れて眠ってしまい、シュウジを抱きかかえたまま携帯を手に取った。
が、充電が切れていて、すぐに電話をすることが叶わず。
車においてあったケーブルを取りに行こうと思ったけど、シュウジを布団の上に置いた瞬間、スイッチが入ったように泣きじゃくってしまい、どうすることもできなかった。
親父の奥さんが気を利かせて、ケーブルを取りに行ってくれたまではいいんだけど、声を出してシュウジを起こすわけにもいかず、黙ったまま美香にメールを打っていた。
美香にメールをしたまではいいんだけど、すぐにエラーメールが送り返される始末。
『アドレス変えられた? 嘘だろ? 何も聞いてねぇぞ? 明日、会社に行って聞いてみるか』
そう思いながら自分の無力さに、ため息をつくことしかできなかった。
昼過ぎに帰ろうとすると、シュウジがあひるを握りしめたまま、またしても泣きじゃくってしまい、シュウジに切り出した。
「そのあひる、キーホルダーにしてやるから、パーツ買いに行こうぜ」
シュウジは涙を拭いながら頷き、二人でクラフトショップに行った後、実家に戻り、シュウジの目の前でキーホルダーにしてあげると、シュウジは保育園のバッグを持ってきて「これにつけて」と切り出してきた。
キーホルダーをバッグにつけると、シュウジは保育園のバッグをずっと抱える始末。
夕方過ぎに家に帰ろうとすると、シュウジはまたしても泣きじゃくってしまった。
キーホルダーを指さしながら「あんまり泣くと、あひるから戻れなくなるぞ?」と言うと、シュウジは泣き止み、キーホルダーを見つめ始めんだけど、俺の手を放そうとはしなかった。
結局、帰ることができないまま、翌早朝に実家を出た後、そのままマンションに行ったんだけど、美香の姿はない。
すぐに電話をしたんだけど、番号まで変えられている始末。
なぜ何も言わずに消えてしまったのか、番号とアドレスまで変えられてしまったのか…
どれだけ考えても何もわからず、ソファに座り、ただただ美香の帰りを待っていた。
荷物はそのまま置いてあったから、すぐに帰ってくるとは思うんだけど、美香は姿を現さないまま、時間だけが過ぎてしまい、何もできないままに事務所に戻っていた。
朝の準備をしていると、休み前よりも作業数が少ない。
『相当減ってるな… これはかなりまずいかも…』
そう思いながら資料をまとめていると、携帯が鳴り響き、兄貴から「今すぐこっちに来てくれ」との事。
兄貴には話したいこともあったし、準備を切り上げようとしていると、ユウゴがのんきに出社してきた。
「兄貴のところ、行ってくるわ」
「わかったぁ~。 ま、こんだけ少なければ俺一人で十分だろ。 ケイスケと美香にはモーションコミックやらせとくわ」
ユウゴの言葉に返事をし、すぐに事務所を飛び出し、車を運転しながら、ずっと美香のことを考えていた。
『なんで急にいなくなった? なんで番号とアドレスを変えた?』
連休中に起きたことを思い出しながら考えていると、美香の言葉が頭を過る。
【隠し子ですか?】
『まさか、揉めてたところ見られてた? 妊婦がいきなり責任とれって怒鳴ってきたら… 誰だってそういう事だと思うよな… それってマジでやばいってことなんじゃ…』
一気に血の気が引いていくのを感じつつも、兄貴のもとへ向かっていた。
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