第146話 間違い
美香の待つ車に乗り込み、「飯、どこ行く?」と話していると、携帯に着信があり、慌てて車を停めた。
携帯には【親父の奥さん】と表示されていて、すぐに電話に出ると、電話の向こうからシュウジの声が聞こえてきた。
「にいちゃん、おまつりいこ」
「祭り? 昨日行ったばっかりだろ?」
「きょうもおまつりなんだよ。 ねえちゃんといっしょにいこ」
「とりあえずママに代わって」と言った後、詳しく話を聞くと、この日は『以前、桜祭りをやった公園で、夏祭りが開催される』とのこと。
「うさぎのお姉ちゃんをお泊りさせるって言ってるんだけど、彼女のこと?」
「ああ。 今隣にいるから聞いてみるよ」と言った後、美香に聞いてみると、美香は「泊りはちょっと… ご迷惑になってしまうので…」と歯切れの悪い感じ。
その事を親父の奥さんに伝えると、「こっちは気にしないでいいわよ? うさぎのかわいいくて優しいお姉ちゃん、見てみたいし」と、どこかウキウキした感じ。
再度、美香に聞いてみると、美香は「でも泊りは…」とかなり困っている様子。
「泊りは無理だよ」と伝えると、電話の向こうからシュウジの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
それと同時に「どうしてもお願い!」と言われたんだけど、美香にもそれが聞こえたようで、「仕方ないですね… 今日だけ、お邪魔しちゃいます」と諦めたように言っていた。
美香の実家に荷物を取りに行った後、通りがかりにあった店で昼食を取り、マンションの前に車を停めると、美香は「準備終わったらそちらにお伺いしますね」と言い、マンションの中に入っていった。
自宅に戻った後、着替えと荷物の準備をしてしばらくすると、インターホンが鳴り、美香がドアの前に立っていた。
ドアを開けてすぐ「ドライブしながら行くか」と切り出すと、美香は笑顔で了承をし、二人でドライブへ。
目的地も決めないまま、思い付いた場所に行き、美香はシュウジや親父の奥さんへ手土産を買っていた。
結局、俺も美香も泊まることに抵抗があり、「帰れそうだったら帰ろう」と言う話になったんだけど、シュウジの待つマンションについた時には、辺りは真っ暗になっていて、車を停めてすぐ、シュウジは窓の向こうから「ねえちゃん遅い!!」と文句タラタラ。
美香は「ごめんね~。 迷子になっちゃった!」と言いながら笑い、二人でシュウジを迎えに行ったんだけど、美香は親父の奥さんを見てかなり驚いていた。
美香が手土産を渡した後、シュウジと3人で公園に行ったんだけど、桜祭りのときに手伝ったせいか、どこに行っても「だいちゃん」と呼ばれてしまい、3人分の焼きそばやジュースだけではなく、ビールまでもをもらっていた。
シュウジは焼きそばを見た途端、「たべる!」と騒ぎ始め、ベンチに座って食べることに。
3人並んで食べていると、シュウジは偉そうに「ここね、3月になるとさくらまつりやるんだよ! さくらと花火がドーンってなるの! すごいんだよ!」と言い始めていた。
美香は「へぇ! お姉ちゃん、桜大好きなんだ! 3月になったら見に来ようかな!」と嬉しそうに言い、シュウジは「うん! 一緒に見よう! にいちゃん、ちゃんと連れてきてよ!」と偉そうに言い、美香と約束していた。
しばらく話しながら飲み食いしていると、美香が「あれ? ビール飲んじゃダメじゃないですか?」と聞いてきた。
「あ! やっべ! 間違えた!」と言いながら手元を見ると、既に1本開けている状態。
それを見たシュウジは「やった! お泊りだ!!」と歓喜の声を上げ、美香は苦笑いを浮かべていた。
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