第111話 頼み
あゆみの作り話を聞いた夜。
結局、4人で食事に行った後、シャワーを浴びてベッドに潜り込んだんだけど、なかなか寝付くことができず、リビングでネットサーフィンをしながら酒を飲んでいた。
しばらくネットの記事を読んでいると、【人気アニメ第2部放送決定!! 新OP先行公開!!】の記事が視界に飛びんで来た。
『前作の時、美香が参加したアニメだよな』
そう思いながら動画を見てみると、あまりにも完成度が低く、コメント欄には酷評の嵐。
『これって最終チェックしてOK出したってことだよな? OK出す方もどうなんだ? うちだったら間違いなく作り直させるぞ?』
そう思いながらコメント欄を読んでいると、【前期担当者に作り直してもらえ。 早急にだ】というコメントが視界に飛び込んできた。
『前期担当者か… もしかして、美香がまだ無口になってるのって、これが関係してたり? まさかな。 プロジェクトから外されたんだし、今更だよな』
その後もコメントを読んでいると、数えきれないほどの白鳳批判がコメント欄を埋め尽くしていた。
『白鳳も落ちたか…』と思いながらコメント欄を流し見ていると、一つのコメントが目についた。
【製作白鳳。 ホワイトリリィってどこだよ】
『ホワイトリリィ?』と思い、検索してみると、白百合で縁どられた中に【White lily corporation】と書いてあるロゴマーク。
そのページを開き、スクロールしていくと【代表取締役:山根 明菜】の文字が目に飛び込んできた。
『山根って、この前かおりさんが言ってた人だよな?』
そう思いながら【ホワイトリリィ 山根明菜】で検索してみると、山根のブログに辿り着いた。
そこにはアニメ制作現場の写真が掲載されていたんだけど、現場にいるほとんどの女性が綺麗に着飾っていて、白い百合の花があちらこちらに飾られ、テーブルの上には高そうなケーキやお菓子の箱、高級弁当や高級紅茶の箱までもが、山積みになって写り込んでいた。
『えー… アニメ制作現場ってこんなにキラキラしてんの? 嘘だろ? うちでは考えらんねぇ… 食い物だけでもン十万はしてるだろうし、そりゃ行きたがるわけだよなぁ…』
そう思いながらカーテンを開けてみると、マンションの一室から煌々と光が放たれていた。
『今頃これ見てるのかな… 悔しくて寝れないだろうな…』
そう思いながらカーテンを閉めた後、しばらくの間ネットの記事を読んでいた。
翌朝。
朝の準備をしていると、美香が眠そうな顔で出勤してきた。
『案の定、悔しくて寝れなかったんだろうな… あれは酷かったもんなぁ…』
そう思ってしまうと、アニメの件で声をかける事ができず、言葉を飲み込んでいた。
言葉を飲み込んだまま1日が過ぎ、休憩室に3人集まりダラダラしていると、親父の奥さんから携帯に着信があった。
『シュウジのことか?』と思いながら話を聞くと、「いきなりで悪いんだけど、今週末暇かしら? 近所の神社で桜祭りがあるんだけど、その準備に男手が必要なのよ。 当番になった各家庭から最低1人、男性を出さなきゃいけないんだけど、こっちの親戚はみんなダメで… お願いできないかしら?」との事。
「わかった。 いいよ。 そっち行く」と答えると、親父の奥さんは安心したように声を上げていた。
『週末は美香のところ行けないか…』
そう思いながら電話を切り、ユウゴとケイスケの3人で話を続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます