第46話 呼び出し

ユウゴとケイスケの3人で飲んだ翌日、朝の支度をしているときに、『美香、今日は来れるのかな?』と疑問に思い、電話をしてみた。


急ぎの仕事は片付いたし、そこまで忙しいって訳ではないけれど、どうしても気になる気持ちを抑えきれなかった。


けど、美香は電話に出ることがなく、留守電に切り替わってしまった。


仕方なく、メールで体調を伺い、しばらくすると美香から【体調が悪いので病院に行きます。 申し訳ありません】と返信が着ていた。


『今日は会えないのか…』


がっかり肩を落としながら返信をし、普段通りの1日を終えていた。


帰り際、浩平に「明日の打ち合わせ頼むな」と声をかけると、浩平は「10時に向こうの会社だよな! 任せろ!」と気合十分だった。


その様子を見ながら、かなり不安に思いつつも、翌日を迎えていた。



翌日、朝の準備を終え、美香に連絡をしようとすると、携帯が鳴り【浩平】の文字が浮かび上がる。


嫌な予感が浮かびつつも、電話に出ると、浩平は具合が悪そうに「ごめん。 熱出て今日行けないわ」と切り出してきた。


「何度あるんだよ?」


「38度5分。 起きてるのも辛いんだよねぇ…」


そう言ってくる電話の向こうで、咳をする女の声がはっきりと聞こえた。


ため息をついた後「そういう事ならいいよ。 こっちにも考えがあるから」とだけ言うと、浩平は焦ったように「え? いや、マジで体調不良だからな? 誤解すんなよ?」とだけ言うと、一方的に電話を切ってしまった。


『ふざけやがって…』


そう思いながらユウゴとケイスケに事情を話し、「今日はそこまで忙しくないから、ユウゴ頼むな。 俺、行ってくるわ」と言い、外出の準備を始めた。


打ち合わせの場所が片道2時間かかるため、準備が終わり次第、すぐに事務所を出ていた。


『あ、美香に電話してねぇや。 まいっか。 今日も休ませよう』


そう思いながらため息をつき、打ち合わせ場所である会社へ向かった。


数時間後、打ち合わせを終え、すぐ事務所へ向かう。


『帰ったら自分の作業あるし、なかなかヘビーな1日だな… 元はといえば浩平のせいか…』


そう思いながら電車に揺られ、最寄り駅についてすぐ、改札の方へ向かっていた。


時間がまだ昼過ぎなせいか、人がまばらだったんだけど、前の方に見覚えのある後ろ姿が改札を抜けようとしていた。


見覚えのある後ろ姿を追いかけながら、改札を抜けてすぐ、「あれ? 美香ちゃん?」と声をかけると、美香は真っ青な顔をして振り返っていた。


「どした? 顔色悪いぞ?」と声をかけると、美香は俯いたまま軽くお辞儀をしてくる。


あまりにも体調が悪そうで、かなり心配になりながらも「本当に大丈夫か? ちょっと移動したほうが…」と言いながら肩に腕を抱こうとすると、美香はその場で蹲ってしまった。


「お、おい! しっかりしろって!!」


かなり慌てながら声をかけても、美香は苦しそうな表情を浮かべるばかり。


急いでベンチに座らせると、美香は俯いたまま動こうとはしなかった。

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