第198話
ナーマンでの実験の後、同じエリアで複数の魔物と戦うことになった。
特に地球でいう
外皮が硬く、まるで鎧を纏っているかのような堅牢さだ。その下には脂と
走る速度は時速六十キロくらい出ているのではないだろうか。
身体強化された俺の身体なら全然問題ない。
それどころか、ナーマンと同じで巨体でその速度で走り抜けると直ぐには止まれないし、後ろについて追いかければ死角になって見つからないので、同じように膝裏の腱を切って倒すという方法を選んだ。
もちろん、途中で牽制するためにストーンバレットやウォーターボール、アイスバレット等を使い、魔法の熟練度を上げるようにした。
次に接触したのは、遠くに見ていてネスホルンに似ていると思っていた魔物だ。
実際に近くから見るとシルエットは似ているが別物。
ライオンのような鬣が生えているのを見ると、地球にいるバイソンに似ている気がするが、二本の大きく幅広な角が左右に伸びている点で違う生き物だということがわかる。
ミミル曰く、マンケスという名の魔物らしい。まるで刃物のように見える幅広の角が武器なのだが、それが二十頭単位で群れを形成しているのが厄介なところだ。
だが、ナーマンやネスホルンのように皮が硬くて短剣を通さない――なんてことがない。
ストーンバレットやアイスバレットを当てれば怯んでくれるので、戦いやすいし、エアブレードで簡単に脚を切り飛ばすことができる。
魔物が連携して襲ってくることなど一切ないが、一頭ずつ順番に襲ってくるような律儀さもない。
一頭の攻撃を避ければ、他の一頭に突っ込んでいって共に動けなくなるほどダメージを受けていることもあれば、偶然にも同時に二頭が俺に襲いかかることもある。
二頭以上のマンケスが襲ってきた時はストーンバレットを打ち込んで怯ませ、魔力強化で緋色に輝く短剣を振るってヴィヴラに似た斬撃を飛ばして倒していく。
ミミルはこの間、十メートルほど上空に待機して、他の魔物がやってきたときに対応してくれている。
落雷が発生するたびにマンケスが怯えているのがわかる。だが、逃げ出すつもりはないらしく、逆に次々と俺に向かって襲いかかってくる。
いや、怯えたマンケスが逃げ場を失って余計に俺に向かってきてる気がするんだが……これは気の
できれば気の
まあ、短剣を魔力強化できるようになって、戦い方に余裕ができたし、魔法は牽制するという意味ではとても役立っているので全然問題はなかった。
そして現在、俺は八頭ほどの魔物に囲まれている。
犬に似た魔物で、大きさはラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーの成犬程度……中型犬サイズだ。
茶色い体毛に黒っぽい
地球にいるハイエナにとても似ているが、なぜかライオンのような
状況的に俺がピンチなのは間違いないが、ミミルはマンケスのときと同じで、十メートルほど上空にいて、特に手助けするつもりはないらしい。
包囲された状態――俺の音波探知は位置を把握することはできても、リアルタイムで動きを追いかけるのは難しい。背後にいる魔物の動きまで把握できるほど、俺の脳みそは処理能力が高くないし、音波探知は高周波の音波を波操作の加護で変換しているので、普通に魔物が出す音が聞こえなくなってしまう。
それに、人間というのは耳に入ってくる情報と視覚に入ってくる情報に矛盾があれば、視覚から入った情報を優先する。
つまり、後ろで数頭が動く音よりも、目の前で飛びかかってくる魔物の姿の方を優先してしまう。
だが襲われる前に倒せば何も問題はない。
「――ストーンバレット!」
前方の魔物が襲いかかってくる直前、体制を変えて半身に構え直すと左右に向けてぶっ放す。
直径三センチ程度の小石が四個、それが男子プロテニスプレイヤーのファーストサーブと同じくらいの速度で飛んでいくんだ。俺でも
もちろん、ほとんどチラリと見えた程度で放った石礫は中型犬程度の魔物では皮膚や筋肉を貫き、骨を砕いて内臓を破壊する。
当たりどころが良かったのか――背後にいた魔物は一発で断末魔の叫びをあげた。
「――ストーンバレット!」
駆け出してくる正面の魔物二頭に向けて石礫を放ち、振り返って先の二頭に向けてアイスバレットを放つ。
次々と倒される仲間を見て、残った二頭が怯んだようだが関係ない。
「――アイスバレット!」
両手を翳し、残った二頭に氷弾を放つ。
中型犬サイズの魔物八頭との戦いは一分も掛からず終了した。
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