79 もしかして、……"同種"?
振り返ってミシェルを探すと、彼女は男性に声をかけられている。撮影を頼まれ少し雑談しているミシェルの姿に呆れ、亘はミシェルを置いて先に進むことにした。
すると、門の前で写真を撮る人に紛れて、昨日見かけた女性がまた案内をしているのを見付ける。今度は中国語で話しているのを見て3か国語話せるのかと感心する。
ミシェルから電話があり、お互いの場所を確認しミシェルが来るのをもう少し待ってみる。
暇な時間、門を見上げているとあの女性が話しかけてきた。
「どうしたの?ぼく、親とはぐれちゃった?」
亘は視線を向けて間近で彼女を観察する。綺麗な容姿に少し
「ああ、うん。母親とはぐれちゃって」
「そうなの、一緒に探そうか?」
「ううん、大丈夫。連絡とってここで待ち合わせてるから」
「そう、良かった」
そう言って微笑む顔は可愛らしく、どこかキャシーに似ている気がした。彼女と違って黒髪でボブヘアーだが。
「お姉さん、観光ガイドのひと?」
「え?」
「昨日もここで案内してなかった?」
「ああ、見てたの?いいえ、ガイドとかじゃないわ。ナンパしてたのよ」
"ナンパ"という返答に亘は驚く。
「えっ、外国人相手に?」
「ええ、観光客のほうが都合がいいし。私、言葉に不自由しないから」
あっけらかんと話しているが、女性なのにずいぶんと
亘はその女性の容姿を今一度確かめた。整えられた愛らしい顔立ちに明るい表情。言葉に壁がなく、異性を引っ掻けようと必死である。
「お姉さんって、その、間違ってたらごめんね。もしかして、……"同種"?」
彼女の顔が引きつった。亘はやはりと思った。
「な、なんで、わかったの?」
「なんとなく。俺、同種と一緒に暮らしてるから。もしかして体力、まずいの?もしそうなら、血を上げようか?」
亘の申し出に彼女は
「お姉さん?」
「わ~た~る~」
振り返るとミシェルがこっちに近づいていた。
「あ、お母さんが来たからもう行くね。心配してくれてありがとう。お姉さん」
返答のない彼女から離れてミシェルと合流する。少し注意されて階段を下りようとした時には、彼女の姿はもうなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます