波夷羅(はいら)
36 根気よくいきましょう
午前10時、住宅街。
「いないよね~、いたら困るな~」
「ちゃんと閉じられているな。人が入った形跡もないし、窓も閉じられている。ここにはいないだろう」
レーナの言葉にキャシーはほっと胸を撫で下ろした。美女が空き家を覗き見しているのは端から見たら怪しいが、二人は"例の人物"を捜している。
連続殺人を犯している犯人であり、同胞を殺した同種殺し。二ヶ月間、警察が追っているが戸籍も住所も不定のため、痕跡を辿れずにいた。
レーナとキャシーはミシェルの指示で、身を潜めていそうな空き家をしらみ潰しで捜していた。
「怖いな~ばったり出くわしちゃったらど~しよう、私シヴァみたいに格闘技とかできないし~」
「大丈夫だ、キャシー。夜に
不安を抱えるキャシーを励まし、二人は次の空き家へ向かった。
午後6時、北区。
黒人男性のアンドレと黒髪美男子の
いつの間にか買い物帰りに立ち話していた女性二人と盛り上がっている。普通、急に声を掛けられたら相手は不審がるのだが、中性的な顔立ちで柔らかい態度の
数分もしない内に離れてアンドレの元へ戻ってくる。
「おーい、何やってんだよ!
「まさか、聞き取りですよ。怪しい人物や浮浪者がいないか聞いていたんです」
「んで、どうだった?」
「見てはいないそうです。しばらくは帰宅する人に話を聞いてみましょう」
「せめて人相がわかればな~」
現時点で分かっているのは、性別・髪型・身長・服装だけだった。サミュエルが遠目で見た犯人像だけが唯一の手掛かりだった。
「どれだけか
午前0時、駅周辺。
ミシェルとシヴァは終電間近の時刻に駅の周辺で待ち伏せしてみた。人気のない時間に帰宅する人間が一番狙いやすく、サミュエルが犯人を見かけた時の情況と同じであった。
金曜日なので飲み屋から出てくる酔っぱらい達を避けつつ見張ったが、成果はなかった。電車がなくなり、反対側にいたシヴァと合流する。
「どう?」
「全くだ」
「もう電車はないし、住宅街に行ってみましょう」
ミシェル達は歩いて住宅街に向かう。次の被害者が出る前に何としても見つけ出したかった。
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