43 死んじゃだめだ!
車が停止しレバーを下ろして、しばらくハンドルを小突く音が続いた。信号待ちではなくどこかに停車したのだ。
亘は目を開きゆっくりドアウインドウから外を覗き、
逃げ出すために少しでも栄養を摂ろうとした。二度目に血を吸われから、ずっと眠り続けていたが、車の振動で目が覚めだんだんと意識もはっきりしてきた。
車窓から見えた景色からショッピングモールの先に連れていかれたことは分かっている。今なら上手くすれば奴から逃げ出せるかもしれない。
スナック菓子のほうも口に
食べ終えると手の拘束具を無理矢理広げて片手をなんとか引き抜く。元々そこまできつく縛られてはなく、血を吸っていれば亘が動けないと奴が高を
足の紐もほどき車のドアをゆっくり開け外に出る。静かにドアを閉めて、近くのコンテナの裏に隠れる。見える範囲に
だが、すぐにめまいで足を止めた。
貧血から来る頭痛と吐き気も合わさりコンテナ壁面にもたれ掛かる。足も震え恐怖がこみ上げてくる。
逃げ出したことに気づかれ、奴が追いかけてきたらどうする。
見つかれば確実に殺される!
死への恐怖で身が
「動け、動けぇ!うごけぇ!」
強い言葉で恐怖をねじ伏せる。
今は何がなんでも生きなければならない。亘ははじめて
死んでも構わないと思った。
けど今は違う!
「死んじゃだめだ!生きるんだ!」
亘はふらつく足で走り出した。絶対に死ねない、そう思った。
"俺が死んだらミシェルが悲しむ!"
もし自分の遺体を見たら彼女は泣くだろう。涙なんか流せなくとも、あの美しい悪魔は泣いて悲しむ。そんな彼女の姿を想像するだけで亘の中に生への
車に戻った
ケリーの誘導でシヴァは車を
「あれでしょ。例の車、辺りに奴の姿はなかった」
ナンバーを見て間違いなく盗まれた車だと確認する。ミシェルは周囲に人の気配がなかったので、車に駆け寄り二人も後に続く。後ろ側から車に近付いたが、ドアの開いた後部座席に3人は
「いない?」
「犯人も、亘も、乗ってないぞ。どこへ行ったんだ?」
しばらく車内の様子を見てシヴァがある事を想像する。
「まさか!亘の死体を捨てるために海に来たんじゃ!」
最悪の事態を想定するシヴァだったが、ミシェルの考えは違った。
「いいえ、違う。奴は死体の
ミシェルは車の中へ手を伸ばし紐とお菓子の袋を拾った。
「この紐、輪っかになったままだよ。恐らく亘の手足を縛っていたもの。もし、亘の遺体を捨てようとしたのなら、そのまま海へ投げ捨てればいい。わざわざ拘束を解く必要はない。それに…」
ミシェルはチョコの菓子袋に目を落とす。
「
「自力で逃げ出しだってことか?」
「ええ、亘はまだ生きてる。
けど、奴の姿がないのは亘を追いかけたのかもしれない」
ミシェルの推理に二人は舌を巻きつつ、亘の危機に緊張感が走る。
「あの子を探そう!奴よりも先に見つけなきゃ!」
3人は三手に分かれて亘を探した。
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