死と生
41 化け物はお前だけだ!
日が傾き
ごわごわしたシートに体を預けて
「何故、奴等は俺を探しているんだろうな」
独り言なのか亘に問いかけているのか、
「警察が俺を探しているのは分かるが、同種達は何故俺を狩り立てる?お前は理由を知っているか」
「あんたが、サミュエルさんを殺したからだろう」
「サミュエル?」
一体誰だと言わんばかりに聞き返す
「お前が殺した同種のひとだ」
「ああ、あいつか。つけられたから
「誰だって仲良くしていたひとが殺されれば怒るだろ!許せないって思うはずだ!」
「それは人の感覚だ。俺達にそんな感情は存在しない」
「それでも、ミシェルはあんたを許す気はないよ」
「なるほど、同胞の
「馬鹿馬鹿しい、だって」
「人を殺して裁かれるのは人の社会でのことだ。俺達は社会の枠どころか人の
「けど、人が死んだら警察は犯人を探す。社会に迷惑がかかる。だからミシェル達は殺したりせずに、人に協力してもらって少しだけ生気を吸ってるんだ」
「それが馬鹿らしいというんだ。ちびちび生気を吸って少しの期間腹を満たして、自分は安全な領域だと思い込んでる。同種はみな化け物だというのに」
「化け物…」
確かに同種は人ではない。
様々な総称で呼ばれそのほとんどが悪なる者とされている。
「あいつらがしょぼくれた食事しかしないのは、自分が化け物だと認めたくないからさ。人のフリをすれば人間に成れると思ってる。馬鹿な連中だ。」
亘はミシェル達の顔を思い浮かべた。この2ヶ月で出会った様々な同種達。彼女らと関わっていくうち亘は同種に似たところを感じていた。
この世界のどこにも居場所がなく、何を頼りにしていいのか分からない。信頼も愛情も分からずたった一人で生きていく。
それでも人と出会い、関わり、
亘は何よりも"人"らしいと思っていた。
「馬鹿なのはお前だよ」
亘は
「確かにミシェル達は人じゃないさ。でも、ミシェル達には心がある。
恋人と上手くいかなくて悩んだり、人とどう付き合ったらいいかわからなかったり…
大切な人と死に別れて泣きたいほど悲しかったり…
逆に、人に愛されて心の底から幸せだって感じたり……
そんな感情が、お前の中にひとつでもあるのかよ!」
亘は知っていた。
同種達も人と同じように苦しみ、悩み、喜ぶもの達だと。
「お前はただ、人と関わるのが面倒なだけだろ!人とも同種とも関わってないのに、知ったようなことを言うな!」
亘は
「化け物はお前だけだ!ミシェル達は絶対に違う!」
亘は彼を怒らせてしまったと
「やっ、やめろ!来るな!」
「ああああっっ!」
痛みで叫ぶ。
波夷羅は吸い終わった亘の体をまるで物を捨てるかのようにソファーに落とした。かろうじて亘は生きている。怒りに任せて殺すようなことはしなかったが、いつ殺されてもおかしくはなかった。薄れいく意識の中で亘は助けを求めた。
「ミシェル…」
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